取引先へ代金を振り込んだときや、 売上代金を受け取ったときに発生する 「振込手数料」。
金額は数百円程度でも、 帳簿を付けるときには、
「勘定科目は支払手数料?雑費?」
「取引先が手数料を引いて振り込んできた場合は?」
「個人口座から払ったらどう仕訳する?」
と迷いやすい項目です。
特に、 売上代金から振込手数料が差し引かれて入金されたケースは、 単純な「支払手数料」だけでなく、 消費税・インボイス上の売上値引き としての処理も関係するため注意が必要です。
この記事では、 個人事業主の振込手数料について、 勘定科目・仕訳・自分負担・相手負担・売上から差し引かれた場合 まで具体例で解説します。
まず結論
・事業上の振込手数料 → 「支払手数料」が分かりやすい
・少額だから「雑費」でもいい? → 絶対NGではないが、継続して発生するなら支払手数料がおすすめ
・取引先への振込手数料を自分が負担 → 支払手数料として必要経費
・個人口座から事業の振込手数料を払った → 「支払手数料 / 事業主借」
・取引先が売上代金から手数料相当額を差し引いた → 契約内容・経理方法によって処理が変わる
特に課税事業者は、 売上値引きとして処理する場合のインボイス上の取扱い まで確認しましょう。
振込手数料の勘定科目は「支払手数料」が基本
事業上の振込みで発生した銀行の振込手数料は、 一般的に 「支払手数料」 として処理すると分かりやすいです。
たとえば、 取引先へ100,000円を振り込み、 振込手数料440円が別途かかった場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 100,000円 | 普通預金 | 100,440円 |
| 支払手数料 | 440円 |
支払総額100,440円のうち、
- 取引先への代金:100,000円
- 銀行への振込手数料:440円
と分けて記録します。
現役税務会計スタッフのワンポイント
振込手数料に絶対この勘定科目を使わなければならない、 という意味ではありません。 ただし、毎月発生するものを 「支払手数料」に統一しておくと年間金額を確認しやすい ため、実務上も管理しやすくなります。
振込手数料を「雑費」にしてもいい?
振込手数料が数百円だから、
「雑費でいいのでは?」
と思う方もいるでしょう。
少額・臨時的な支出について 雑費を使うケースもありますが、 振込手数料のように 内容が明確で継続的に発生する費用は、 支払手数料として分けた方が帳簿を確認しやすくなります。
| 勘定科目 | 使い方 |
|---|---|
| 支払手数料 | 振込手数料など内容が明確な手数料におすすめ |
| 雑費 | 金額が小さく、他の科目に当てはめにくい臨時的な支出など |
税務上は、 勘定科目の名前だけで必要経費になるかが決まるわけではありません。
重要なのは、 実際に事業のために必要な支出だったか という点です。
自分が振込手数料を負担した場合の仕訳
まず最も分かりやすいのが、 自分が取引先へ支払うときに 振込手数料を負担するケースです。
経費50,000円+振込手数料330円を支払った場合
たとえば、 外注先へ50,000円を支払い、 銀行から330円の振込手数料が引かれた場合です。
| 外注工賃 | 50,000円 | 普通預金 | 50,330円 |
| 支払手数料 | 330円 |
振込手数料330円も、 その支払いが事業のために必要なものであれば、 必要経費として処理します。
個人口座から振込手数料を払った場合
個人事業主の場合、 事業用口座ではなく、 プライベートの銀行口座から 事業の支払いをすることもあります。
その場合は、 「事業主借」 を使うと処理しやすくなります。
個人口座から50,330円を支払った場合
| 外注工賃 | 50,000円 | 事業主借 | 50,330円 |
| 支払手数料 | 330円 |
取引先が振込手数料を負担する場合
次に、 取引先へ請求した売上代金について、 振込手数料を取引先側が負担 するケースです。
たとえば100,000円を請求し、 取引先が振込手数料440円を別途負担して、 自分の口座へ100,000円がそのまま入金された場合です。
| 普通預金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 |
自分は振込手数料を負担していないため、 自分側で振込手数料の経費仕訳をする必要はありません。
売上から振込手数料を差し引かれて入金された場合
実務で特に迷いやすいのがこのケースです。
100,000円を請求したにもかかわらず、 取引先が440円を差し引き、 99,560円だけ入金 してきたとします。
このとき、 単純に
「差額440円=支払手数料」
とだけ決めつけるのではなく、 誰が振込手数料を負担する契約なのか を確認する必要があります。
売手負担として売上値引き扱いにする場合
取引条件として、 売手側が振込手数料相当額を負担し、 その分だけ売上代金を値引きすると考える場合があります。
この場合は、 たとえば次のように処理します。
| 普通預金 | 99,560円 | 売掛金 | 100,000円 |
| 売上値引 | 440円 |
この場合、 消費税上は 売上げに係る対価の返還等 として扱うことになります。
現役税務会計スタッフのワンポイント
「売上100,000円なのに99,560円しか入っていない」という場合は、 売上自体を99,560円にしてしまうより、 請求額100,000円と差額440円を分けて記録した方が、 請求書・売掛金残高とも照合しやすくなります。
インボイスでは振込手数料の扱いに注意
消費税の課税事業者、 特にインボイス発行事業者は、 売上から差し引かれた振込手数料について さらに注意が必要です。
売手が負担する振込手数料相当額を 「売上値引き」 として処理した場合、 消費税上は 売上げに係る対価の返還等となります。
本来は適格返還請求書の交付が問題になりますが、 税込1万円未満の対価返還等については、 適格返還請求書の交付義務が免除 されています。
一般的な振込手数料であれば 1万円未満となるケースが多いため、 この免除規定に該当することが多いでしょう。
「振込手数料=必ず支払手数料」ではない
売上代金から取引先が振込手数料相当額を差し引いたケースでは、 売上値引き・決済サービスの対価・立替払いなど、 契約関係によって消費税上の処理が分かれる場合があります。 課税事業者は、金額だけでなく取引の実態を確認しましょう。
2026年からは「取適法」の振込手数料にも注意
2026年1月1日から、 従来の下請法は 取適法へ改正されました。
取適法の対象となる製造委託・役務提供委託などの取引では、 委託事業者が中小受託事業者へ代金を振り込む際の手数料を、
中小受託事業者に負担させて代金から差し引くこと
が禁止されています。
しかも、 当事者同士で 「振込手数料は受取側負担」 と合意していたとしても、 取適法の対象取引では問題となります。
すべてのBtoB取引が対象という意味ではありません
取適法には、 対象となる委託内容や事業者規模などの要件があります。 取引先から振込手数料を差し引かれた=必ず違法 と判断するのではなく、 その取引が取適法の対象かを確認してください。
現役税務会計スタッフのワンポイント
これまで取引先から当然のように 「振込手数料を引いて払います」と言われていた方は、 2026年以降、 会計処理だけでなく取適法の対象取引かどうか も確認しておきたいポイントです。
売上100,000円に対して99,560円しか入金されなかったら?
実務では、 入金時に売掛金残高が440円だけ残って初めて、 手数料が差し引かれていることに気付くこともあります。
この場合、 まず確認したいのは次の3点です。
- 請求書の金額は100,000円か
- 契約上、振込手数料は誰が負担することになっているか
- 実際の入金額はいくらか
自分が負担する合意になっているのであれば、 売上値引き等の適切な処理を検討します。
一方、 本来取引先が100,000円全額を支払う契約なのに 勝手に440円を差し引いているのであれば、 売掛金440円が未回収のまま残っている 可能性があります。
入金差額を自動的に経費にしない
請求額と入金額が違うからといって、 差額をすべて「支払手数料」にすると、 単なる未回収・値引き・源泉徴収・振込手数料 などを混同する可能性があります。 まず差額の理由を確認しましょう。
源泉徴収されている入金と振込手数料を混同しない
士業・ライター・デザイナーなど、 報酬から源泉所得税が差し引かれる取引では、 請求額より実際の入金額が少なくなることがあります。
この差額を すべて振込手数料だと思って 「支払手数料」にしてはいけません。
源泉所得税は、 自分の所得税を取引先があらかじめ徴収して納付するものです。
そのため、 入金差額については、
- 源泉所得税
- 振込手数料
- 売上値引き
- 未回収金
などを区別して確認します。
振込手数料を事業用口座から払った場合
事業用銀行口座から振込を行えば、 振込手数料と事業取引を対応させやすくなります。
逆に、
- 事業用口座
- 個人口座
- ネット銀行
- 個人カード
などを混在させると、 どの手数料が事業用なのか確認する作業が増えます。
取引件数が増えてきたら、 事業用の銀行口座を分けると管理しやすくなります。
クレジットカードの手数料とは処理が違う?
振込手数料と、 クレジットカード払いで発生する取引を 混同しないようにしましょう。
クレジットカードの場合、 事業用カードで経費を購入したときは、 購入時に未払金を計上し、 後日の口座引落時に未払金を消す処理が基本となります。
振込手数料の勘定科目を一覧で確認
| ケース | 主な勘定科目 |
|---|---|
| 自分が銀行振込手数料を負担 | 支払手数料 |
| 個人口座から事業の手数料を支払った | 支払手数料 / 事業主借 |
| 取引先が振込手数料を全額負担 | 自分側の手数料仕訳は原則不要 |
| 売上から手数料相当額を差し引かれた | 売上値引等を検討 |
| ごく少額・臨時的な手数料 | 雑費を使うケースもある |
銀行口座を会計ソフトと連携すると振込手数料の入力が楽になる
振込件数が増えてくると、
- 振込代金
- 振込手数料
- 売掛金
- 買掛金
を一件ずつ手入力するのは負担になります。
クラウド会計ソフトでは、 対応する銀行口座を連携することで、 入出金明細を取り込み、 仕訳候補を作成できるものがあります。
特に、 毎月多くの振込がある個人事業主なら、 銀行明細と帳簿の照合作業を減らせる メリットがあります。
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振込手数料のチェックリスト
□ 事業に関係する振込手数料か確認した
□ 支払手数料など一定の勘定科目で統一した
□ 個人口座なら事業主借を確認した
□ 請求額と実際の入金額を照合した
□ 入金差額を自動的に支払手数料にしていない
□ 源泉所得税との違いを確認した
□ 売上値引きの場合はインボイスの取扱いを確認した
□ 取適法の対象取引ではないか確認した
よくある質問
Q. 振込手数料の勘定科目は何ですか?
事業上の振込手数料は、 「支払手数料」 として処理するのが分かりやすいです。
勘定科目の名称だけで税務上の経費性が決まるわけではありませんが、 継続して同じ科目を使うと帳簿を管理しやすくなります。
Q. 振込手数料を雑費にしても問題ありませんか?
少額・臨時的な支出として 雑費を使うケースもあります。
ただし、 振込手数料のように内容が明確で継続的に発生するものは、 支払手数料で分けて管理する方がおすすめです。
Q. 個人口座で振込手数料を払ったら経費になりませんか?
個人口座から支払ったことだけを理由に 必要経費にならなくなるわけではありません。
事業のために必要な支出であれば、 「支払手数料 / 事業主借」 などで処理できます。
Q. 売上100,000円なのに99,560円しか振り込まれませんでした
まず、 440円の差額が
- 振込手数料相当額
- 源泉所得税
- 値引き
- 未回収
のどれなのかを確認してください。
振込手数料相当額を売手負担の売上値引きとして処理する場合は、 消費税上の取扱いにも注意が必要です。
Q. 取引先が振込手数料を差し引くのは違法ですか?
すべての取引で直ちに違法になるわけではありません。
ただし、 2026年1月からの取適法の対象となる取引では、 委託事業者が中小受託事業者に振込手数料を負担させ、 代金から差し引く行為は禁止されています。
Q. 振込手数料にも消費税はかかりますか?
銀行が提供する振込サービスの手数料は、 原則として消費税の課税対象となる取引です。
課税事業者が仕入税額控除を行う場合には、 インボイス制度上の保存要件も確認しましょう。
Q. 振込手数料の領収書は必要ですか?
銀行の利用明細・振込明細・インターネットバンキングの取引記録など、 取引内容と金額を確認できる資料を適切に保存しておきましょう。
消費税の課税事業者については、 仕入税額控除に必要な保存要件も別途確認する必要があります。
まとめ|振込手数料は「誰が負担したか」を確認しよう
振込手数料の仕訳は、 単純にすべて 「支払手数料」 とすればよいわけではありません。
特に売上代金から手数料相当額が差し引かれた場合は、 契約上誰が負担するのか、 どのような取引として処理するのか を確認することが重要です。
この記事のまとめ
・事業上の振込手数料は支払手数料が分かりやすい
・継続して発生するなら雑費より支払手数料で管理
・個人口座で払った場合は事業主借を使える
・相手負担なら自分側で手数料経費は原則発生しない
・売上から差し引かれた場合は契約内容を確認する
・売上値引きならインボイス上の取扱いにも注意する
・入金差額は源泉所得税などとの区別が必要
・2026年以降は取適法の対象取引にも注意する
現役税務会計スタッフのワンポイント
振込手数料は1件数百円でも、 毎月積み重なると年間ではそれなりの金額になります。 支払手数料として科目を統一し、 銀行口座を会計ソフトと連携しておくと、 入力漏れや売掛金の消し忘れも見つけやすくなります。
振込手数料の仕訳で迷っているケースはありますか?
「売上から手数料を引かれた」 「個人口座から振り込んだ」 「源泉徴収と手数料の両方が引かれている」など、 記事を読んでも分かりにくかった点があればコメントで教えてください。 今後の記事・FAQ作成の参考にさせていただきます。
参考:公的情報
必要経費、インボイス制度、 2026年からの取適法については、 以下の公的情報も確認してください。

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