「一人親方として仕事をしているけれど、売上が増えたら法人化した方がいい?」
「元請けから会社を作るように言われたけれど、税金や社会保険料はどう変わる?」
「今持っている建設業許可や一人親方の労災保険は、法人化後も使える?」
建設業の一人親方として仕事を続け、売上や受注件数が増えてくると、法人化を考える機会もあるのではないでしょうか。
結論からいうと、一人親方の法人化は、売上や年収だけで判断できません。
外注費・材料費などを差し引いた年間利益に加え、元請けとの契約条件、社会保険料、建設業許可の取扱いなどを確認する必要があります。
特に建設業では、会社を設立しただけで現在の建設業許可や元請け契約が自動的に引き継がれるわけではない点に注意が必要です。
この記事では、一人親方が法人化を検討する利益の目安、税金と社会保険料の違い、建設業許可・労災保険・元請け契約の注意点を、現役税務会計スタッフが実務目線で解説します。
まず結論|一人親方が法人化を検討したいケース
- 年間利益が安定して大きくなってきた
- 今後も元請けから継続的に仕事を受注できる見込みがある
- 法人契約を希望する元請けとの取引を増やしたい
- 従業員の採用や事業拡大を考えている
- 社会保険料・会社の維持費を含めても法人化が有利か比較したい
- 建設業許可や取引先との契約を円滑に引き継ぎたい
※法人化に有利な一律の利益・売上基準はありません。税金・社会保険料・工事契約・許認可は個々の状況によって異なります。
一人親方は利益いくらから法人化すべき?
一人親方が法人化を考えるとき、まず確認したいのが年間利益です。
建設業では、売上が大きくても、材料費や外注費が多い場合には利益があまり残らないことがあります。
また、仕事を受注した月と入金される月が異なることも多く、年間利益と預金残高が一致するとは限りません。
売上800万円・1,100万円・1,500万円のケースを比較
例えば、建設業の一人親方が、次のような売上と経費で事業を行っている場合を考えます。
| ケース | 年間売上 | 年間経費 | 年間利益 |
|---|---|---|---|
| A | 800万円 | 270万円 | 530万円 |
| B | 1,100万円 | 400万円 | 700万円 |
| C | 1,500万円 | 650万円 | 850万円 |
※いずれも説明用の仮定です。売上・経費は消費税抜きで比較できる前提とし、年間経費には材料費、外注費、車両関連費などを含むものとします。事業主本人の生活費、青色申告特別控除、所得税・住民税・社会保険料は含めていません。
この表を見ると、売上800万円のケースAと売上1,500万円のケースCでは、売上は700万円違いますが、利益の差は320万円です。
材料費や外注費が多い事業ほど、売上だけでは法人化の損得を判断しにくくなります。
利益500万円前後の場合
年間利益が500万円前後の場合は、法人化による追加費用を慎重に確認したいところです。
法人化すると、原則として健康保険・厚生年金保険の適用関係が変わり、法人住民税の均等割や決算申告費用なども考慮する必要があります。
今後も一人で現場仕事を続け、売上の拡大を予定していない場合には、個人事業主のままの方が合理的なこともあります。
利益700万円前後の場合
年間利益700万円前後になってきた場合は、個人事業と法人の税金・社会保険料を具体的に比較し始めるとよいでしょう。
ただし、利益700万円なら必ず法人化した方が得、というわけではありません。
役員報酬の金額、家族構成、加入している健康保険、今後の利益予測などによって結論は異なります。
利益850万円以上の場合
利益が850万円以上で安定している場合は、法人化後の税負担や社会保険料を試算する価値が高くなります。
ただし、現在は高単価の現場を継続受注できていても、翌年に同じ利益が確保できるとは限りません。
取引先が限られている場合や、大きな工事の終了後に受注が減る可能性がある場合には、利益の継続性まで確認しましょう。
現役税務会計スタッフのワンポイント①
一人親方の法人化を判断するときは、売上・利益・入金予定を別々に整理することが重要です。建設業では、工事代金の入金よりも先に材料費や外注費を支払う場合があります。年間利益が十分にあっても資金繰りが厳しいことがあるため、会社設立前に直近12か月の利益と今後6〜12か月の入出金予定を確認しましょう。
なお、利益800万円前後の法人化の損得については、次の記事で一般的な税負担を比較しています。
一人親方の法人化は「手取り」と「会社の維持費」で比較する
法人化すると、会社に法人税等がかかるほか、社長個人が受け取る役員報酬にも所得税・住民税などがかかります。
また、社会保険料は会社負担分と本人負担分に分かれます。
そのため、法人税率だけを見て「法人化した方が安い」と判断するのは適切ではありません。
税金・社会保険料・会社の維持費を合わせて比較する必要があります。
特に現在の利益が700万〜900万円程度で、法人化するかどうか迷っている場合は、会社設立前に税負担を試算しておくことをおすすめします。
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一人親方が法人化する4つのメリット
① 税金と役員報酬を分けて考えられる
個人事業主の場合、事業の利益は原則として本人の事業所得になります。
一方、法人化すると会社と社長個人は別の納税主体です。
会社は法人税等を納め、社長は役員報酬に対する所得税・住民税などを納めます。
一定の要件を満たす役員報酬は会社の損金になるため、会社と個人の税負担を分けて検討できます。
ただし、社会保険料や会社の維持費まで含めると、必ず法人化が有利になるわけではありません。
② 法人契約を希望する元請けとの取引を検討できる
建設業では、元請けや取引先によって、個人事業主との契約を認めている場合と、法人との契約を希望する場合があります。
現在の元請けから法人化を求められている場合は、会社設立を検討する理由の一つになります。
ただし、法人化すれば必ず受注できる、単価が上がるというわけではありません。
建設業許可の有無、施工実績、技術者の配置、施工体制、保険加入状況など、取引先が求める条件も確認する必要があります。
③ 従業員を採用して事業拡大を検討できる
一人親方として自分だけで現場に入る働き方から、従業員を採用して複数の現場を請け負う働き方へ変える場合、法人化は選択肢になります。
例えば、複数の職人を雇用したり、現場管理を任せたりして事業を拡大するケースです。
ただし、個人事業主でも従業員を雇うことは可能です。
法人化が必要かどうかは、採用予定、元請けの取引条件、社会保険料、将来の経営計画などを合わせて判断しましょう。
④ 事業資金と個人の生活費を分けて管理できる
法人化すると、法人の資金と社長個人の資金は明確に区別して管理する必要があります。
例えば、会社に利益を残して事業用車両を購入したり、設備投資に備えたりすることができます。
一方、会社のお金を自由に個人の生活費として使えるわけではありません。
社長への支払いは、役員報酬・貸付金など、取引内容に応じて適切に処理する必要があります。
一人親方が法人化すると社会保険はどうなる?
一人親方の法人化では、社会保険料の変化が特に重要です。
税金が安くなっても、法人化後の保険料負担が増える場合があるためです。
個人事業主と法人では社会保険の適用が異なる
個人事業主として一人で建設業を営んでいる場合、一般的には国民年金や国民健康保険などに加入します。
建設業関係の国民健康保険組合に加入している一人親方もいるでしょう。
一方、法人は、社長一人であっても、原則として健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。
ただし、社長本人が被保険者となるかどうかは、役員報酬の有無や勤務実態などを踏まえて判断します。
| 比較項目 | 個人の一人親方 | 法人化後 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 国民健康保険・建設国保等 | 原則として被用者保険。適用除外承認を受ける例外あり |
| 年金 | 通常は国民年金 | 被保険者の要件を満たせば厚生年金 |
| 保険料負担 | 本人が負担する制度が中心 | 会社負担分と本人負担分が生じる |
建設国保は法人化すると必ず脱退する?
現在、建設業の国民健康保険組合に加入している場合は、法人化する前に加入先の組合へ確認しましょう。
一定の条件を満たし、健康保険被保険者適用除外承認を受けることで、法人化後も建設国保への加入を継続できる場合があります。
ただし、すべての建設国保組合で同じ条件とは限らず、所定の手続きや期限があります。
また、健康保険について適用除外承認を受けたとしても、厚生年金保険の加入義務までなくなるわけではありません。
「建設国保に入っているから、法人化後も厚生年金に入らなくてよい」と判断するのは誤りです。
法人化する前に、加入している建設国保組合と管轄の年金事務所へ確認してください。
社会保険料は会社負担と本人負担の両方で比較する
法人化後に社長自身が健康保険・厚生年金保険の被保険者となる場合、原則として会社と本人が保険料をそれぞれ負担します。
会社負担分は会社の経費になりますが、自分が経営する事業の資金から支払うことには変わりません。
税金だけでなく、両方の保険料負担を含めて法人化の損得を試算しましょう。
法人化すると一人親方の労災保険はどうなる?
建設業では、作業中のけがなどに備えるため、労災保険の取扱いも重要です。
一人親方本人は通常の雇用労働者ではないため、一定の条件で労災保険の特別加入制度を利用できます。
一人親方の労災特別加入と社会保険は別制度
一人親方の労災特別加入は、現場作業中の事故などに備えるための制度です。
健康保険・厚生年金保険とは別の制度なので、法人化後の社会保険加入だけで、現場作業中のけがへの補償がすべて整うとは限りません。
また、法人化したからといって、代表者本人が自動的に通常の労災保険の対象になるわけでもありません。
法人の代表者でも特別加入の対象になる場合がある
従業員を使用せずに建設事業を行っている法人の代表者などは、一定の条件を満たせば、一人親方等として労災特別加入の対象となる場合があります。
一方、従業員を使用するようになった場合は、事業形態や使用状況によって、中小事業主等の特別加入などの検討が必要になります。
法人化前から労災特別加入している方は、加入先の団体へ法人化予定を伝え、加入区分や継続手続きを確認しましょう。
現役税務会計スタッフのワンポイント②
一人親方の法人化で確認したい保険は、健康保険・年金・労災保険の3つです。それぞれ制度や加入要件が異なります。特に建設国保と一人親方の労災特別加入については、法人化しても同じ条件で継続できるとは限りません。会社設立前に加入先へ確認し、現場に入れない期間や補償の空白が生じないようにしましょう。
個人名義の建設業許可は法人化後も引き継げる?
建設業の一人親方が法人化するとき、税金や社会保険と並んで確認したいのが建設業許可です。
現在、個人事業主として建設業許可を取得している場合、法人を設立しただけで許可が自動的に移るわけではありません。
建設業許可の事業承継には事前認可制度がある
2020年10月から、建設業許可について事業承継の認可制度が設けられています。
一定の要件を満たし、事業の譲渡等について事前の認可を受けることで、許可を受けた建設業者としての地位を承継できる仕組みです。
この制度は、個人事業主から新設法人への法人成りでも利用できる場合があります。
ただし、法人側が許可要件を満たすこと、必要な範囲の事業を承継することなど、個別の要件があります。
すでに建設業許可を持っている一人親方は、会社設立や事業譲渡を進める前に、許可行政庁へ承継方法を確認しましょう。
事前認可を利用しない場合は許可の空白に注意
事前認可を利用せず、個人の許可を廃業して法人で新たに許可を取得する場合、許可を受けていない期間が生じる可能性があります。
その期間は、許可が必要な建設工事を請け負うことができません。
元請けとの契約や施工予定に影響する可能性があるため、法人化の日程だけを先に決めるのは避けたいところです。
建設業許可が不要な工事もある
建設業許可は、すべての建設工事について必要というわけではありません。
国土交通省は、軽微な建設工事について、次の基準を示しています。
| 工事の区分 | 軽微な建設工事の基準 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 請負代金1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の一定の木造住宅工事 |
| 建築一式工事以外 | 1件の請負代金500万円未満 |
※金額には消費税・地方消費税を含みます。建築一式工事の木造住宅に関する条件など、詳細は国土交通省の公式情報を確認してください。また、建設業許可以外の登録・許認可が必要になる工事もあります。
例えば、電気工事業などでは建設業許可とは別の登録・届出が関係する場合があります。
そのため、許可が不要な規模の工事だけを行う一人親方でも、法人化前に自分の業種の手続きを確認しましょう。
元請けとの契約は法人化でどう変わる?
現在、個人事業主として元請けや取引先と契約している場合、法人化後の契約名義も確認が必要です。
個人事業主と新設法人は法律上別の主体であり、会社を設立しただけで、個人名義の請負契約が自動的に法人へ移るわけではありません。
法人名義への契約変更には取引先との調整が必要
例えば、個人名義で工事を請け負っている途中で法人化する場合です。
契約内容によっては、契約当事者の変更、請求先の変更、支払口座の変更、保証・保険の確認などが必要になります。
現在進行中の工事については、誰が請負人として責任を負うのかを明確にする必要があります。
法人化の予定がある場合は、元請けに事前に説明しておきましょう。
法人化前に元請けへ確認する項目
- 法人名義で継続して契約できるか
- 契約単価や支払条件が変わるか
- 現在施工中の工事をどう取り扱うか
- 建設業許可や保険加入の提出資料が変わるか
- インボイス登録番号や請求書の名義変更が必要か
- 建設キャリアアップシステム等の登録変更が必要か
- 新設法人の登記事項証明書など、必要な書類は何か
特に、法人化によって継続的な受注を期待している場合は、元請けがどのような条件で法人と契約するのか確認しておくことが重要です。
形式だけの一人親方・請負契約にも注意
建設業では、契約書に「請負契約」と書かれていても、実際の働き方が雇用労働者に近い場合があります。
国土交通省も、契約の形式だけでなく、指揮命令関係などの実態に基づいて、一人親方と雇用労働者を区別する取組みを進めています。
法人化したとしても、契約の実態に関する問題が自動的に解消されるわけではありません。
元請けとの関係を整理する際は、実際の働き方も確認しましょう。
一人親方が法人化すると手取りはいくら変わる?
法人化の損得を判断するためには、会社の税引前利益だけでなく、社長個人が受け取る役員報酬と社会保険料も考える必要があります。
年間利益700万円で法人化する場合のイメージ
先ほどのケースBのように、個人事業主としての年間利益が700万円あると仮定します。
法人化後、社長自身へ毎月40万円の役員報酬を支払う場合を考えましょう。
年間利益700万円の法人化イメージ
| 役員報酬等を引く前の事業利益 | 700万円 |
| 役員報酬(月40万円×12か月) | ▲480万円 |
| 社会保険料の会社負担分(仮定) | ▲80万円 |
| 法人化による追加管理費用(仮定) | ▲30万円 |
| 会社に残る税引前利益 | 110万円 |
※説明用の仮定であり、社会保険料80万円は実際の保険料率で計算した金額ではありません。法人税等、社長個人の所得税・住民税・社会保険料などは含んでいません。役員報酬が損金算入の要件を満たすことを前提としています。
この例では、会社に110万円の税引前利益が残ります。
しかし、社長個人は年間480万円の役員報酬を受け取っており、そこから税金や社会保険料などが差し引かれます。
また、会社には法人税等が発生します。
つまり、法人化後の会社利益が110万円になったからといって、個人事業の利益700万円と単純に比較することはできません。
法人化によって手取りが増えるか判断するには、個人事業を続けた場合と法人化した場合の「税引後・保険料負担後」の金額を比較する必要があります。
役員報酬を途中で自由に変更できるとは限らない
一人親方は、受注する工事や現場の状況によって売上が大きく変動する場合があります。
しかし、法人化後の役員報酬には、定期同額給与などの税務上の損金算入ルールがあります。
工事の受注が減ったからといって、毎月の役員報酬を自由に変更すると、税務上の問題が生じる可能性があります。
役員報酬は、年間を通じて会社が支払える金額を踏まえて検討しましょう。
一人親方が法人化する3つのデメリット
① 社会保険料や固定費が増えることがある
個人事業主から法人化すると、社会保険の適用関係が変わります。
会社負担の社会保険料が発生するほか、法人住民税の均等割や決算申告費用なども考慮する必要があります。
特に受注量が不安定な場合は、利益が少ない年にも固定的な負担が続くことがあります。
② 現場以外の事務作業が増える
法人化すると、法人税申告や給与計算、社会保険の手続きなど、個人事業主のときとは異なる管理業務が発生します。
現場仕事が忙しい場合は、こうした業務を自分で行うのか、税理士や社会保険労務士などへ依頼するのかを考えておきましょう。
税理士に依頼する場合は、顧問料や決算申告料などの費用も見積もる必要があります。
③ 元請け契約や許可の切り替えが必要になる
法人化すると、個人名義の契約や許可について、法人への切り替えを検討する必要があります。
特に建設業許可の承継手続きを適切に進めなければ、工事の受注に影響する可能性があります。
会社を作る時期は、工事の予定や元請けとの契約、許可申請のスケジュールと合わせて検討しましょう。
法人化後の年間維持費については、次の記事でも詳しく解説しています。
法人化すると消費税・インボイスはどうなる?
建設業の一人親方が法人化する場合、消費税の納税義務も確認しておく必要があります。
個人事業主と新設法人は別々の事業者として扱われるため、消費税の納税義務も原則としてそれぞれ判定します。
新設法人では、設立1期目・2期目について基準期間がないため、一定の条件を満たせば免税事業者となる場合があります。
しかし、資本金が1,000万円以上の場合や、特定新規設立法人に該当する場合、インボイス登録を受ける場合など、免税とならないケースもあります。
また、個人事業主時代にインボイス登録をしていたとしても、その登録番号を新設法人がそのまま使用することはできません。
元請けとの請求書や消費税の取扱いに関係するため、法人化前に確認しましょう。
借入金や事業用車両がある一人親方の注意点
一人親方として事業用車両や機械を所有している場合、法人化後にそれらの資産をどう取り扱うかも重要です。
個人事業主と新設法人は別の主体なので、個人所有の車や工具、機械などが自動的に会社の資産になるわけではありません。
会社へ譲渡する場合は、取引価額や税務上の処理を検討する必要があります。
また、借入金やローンが残っている場合は、金融機関やリース会社との契約条件も確認しましょう。
借入金の名義変更や返済については、次の記事で詳しく解説しています。
一人親方が法人化を急がない方がよいケース
ここまでの内容を踏まえると、一人親方であっても、法人化を急がない方がよい場合があります。
| 現在の状況 | 確認したいこと |
|---|---|
| 利益が少ない・安定していない | 法人の維持費を継続して負担できるか |
| 元請けが法人契約を求めていない | 法人化する目的が明確か |
| 建設業許可の承継準備ができていない | 許可行政庁と事前協議が必要ではないか |
| 社会保険料を試算していない | 会社と本人の負担を把握できているか |
| 借入返済・材料費の先払いが多い | 法人化後の資金繰りに無理がないか |
法人化は、利益が一定額に達したら必ず行う手続きではありません。
個人事業主としての働き方を続ける方が、税金・社会保険料・管理費用を含めて合理的な場合もあります。
一人親方の法人化前チェックリスト
法人化を決める前に、次の項目を整理しましょう。
- □ 直近1年間の売上・経費・利益を把握している
- □ 今後1年間の受注見込みを整理している
- □ 個人事業と法人の税金を比較した
- □ 健康保険・厚生年金の負担を試算した
- □ 建設国保の継続条件を確認した
- □ 労災特別加入の取扱いを確認した
- □ 建設業許可の承継が必要か確認した
- □ 元請けとの契約名義をどう変更するか確認した
- □ 車両・設備・借入金の引き継ぎを整理した
- □ 会社設立費用と年間維持費を把握した
- □ 入金予定と支払予定を踏まえた資金繰りを確認した
すべてを自分だけで判断する必要はありません。
税金・社会保険料・維持費については税理士などへ、建設業許可については許可行政庁や手続きを扱う行政書士などへ、契約変更については元請けや取引先へ確認するとよいでしょう。
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一人親方の法人化は、税金だけでなく社会保険料や会社の維持費が関係します。
特に利益が安定してきた方は、個人事業主のまま続ける場合と法人化した場合について、税負担を比較しておくことをおすすめします。
法人化を専門とする税理士に相談することで、現在の利益や今後の売上見込みに基づき、税金や会社の維持費を整理できます。
その結果、今は個人事業主のまま続ける方が有利であれば、無理に法人化する必要はありません。
なお、建設業許可の承継や労災特別加入、元請けとの契約変更などは、それぞれの担当機関・専門家への確認が必要です。
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※建設業許可・労災保険・元請け契約の手続きや結果を保証するものではありません。
一人親方の法人化でよくある質問
Q. 従業員がいない一人親方でも株式会社を作れますか?
はい。従業員を雇っていない一人親方でも、株式会社や合同会社を設立することは可能です。
ただし、法人化した後は会社の決算申告や社会保険などの手続きが必要になります。
建設業許可の要否も、工事内容や請負金額などに応じて確認しましょう。
Q. 法人化したら元請けからの仕事が増えますか?
法人との契約を希望する元請けがある場合、取引先の選択肢が広がる可能性はあります。
ただし、法人化だけで仕事が増えることや単価が上がることは保証されません。
工事実績・施工体制・保険加入状況・建設業許可など、元請けが求める条件も確認しましょう。
Q. 建設業許可を持っていなくても法人化できますか?
はい。建設業許可の有無にかかわらず、会社設立自体は可能です。
ただし、法人として請け負う工事が建設業許可を必要とする場合は、必要な許可を取得しなければなりません。
また、電気工事業など別の法令に基づく登録・届出が必要な業種についても確認が必要です。
Q. 法人化したら建設国保と厚生年金の両方に加入できますか?
一定の条件を満たし、健康保険被保険者適用除外承認を受けることで、建設国保を継続しながら厚生年金に加入できる場合があります。
ただし、加入している組合の資格要件や申請期限などによって取扱いが異なります。
法人化する前に、建設国保組合と年金事務所の双方へ確認しましょう。
まとめ|一人親方の法人化は利益・保険・元請け契約・建設業許可で判断
一人親方が法人化するべきかどうかは、年間売上だけでは決まりません。
材料費・外注費などを差し引いた利益に加え、社会保険料や会社の維持費を比較する必要があります。
また、建設業では元請けとの契約や建設業許可の取扱いも重要です。
個人事業主として取得している建設業許可がある場合は、法人化前に事前認可制度の利用可否を確認しましょう。
健康保険・厚生年金と労災特別加入は別の制度であり、それぞれ適切な手続きを行う必要があります。
法人化を検討するときは、今後の利益予測をもとに、税金・社会保険料・会社の維持費を比較し、元請け契約や建設業許可の手続きまで含めて判断しましょう。
判断に迷う場合は、法人を設立する前に税理士などの専門家へ相談し、無理のないタイミングを検討することをおすすめします。
参考情報・公的資料
- 国土交通省|建設業の許可とは
- 神奈川県|建設業許可の承継認可手続き
- 日本年金機構|適用事業所と被保険者
- 日本年金機構|新規適用の手続き
- 神奈川県建設連合国民健康保険組合|法人設立時の届出
- 厚生労働省|労災保険への特別加入
- 国土交通省|建設業における社会保険加入対策
- 国税庁|役員に対する給与
- 国税庁|個人事業者が法人成りした場合の消費税の納税義務
- 国税庁|基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
本記事は2026年10月20日時点で公表されている制度・公的資料をもとにした一般的な解説です。税金・社会保険・建設業許可・労災保険・元請け契約等の取扱いは、事業内容や所在地、個別の契約条件によって異なります。掲載した売上・利益・費用は説明用の仮定であり、法人化による節税額や手取り増加を保証するものではありません。

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