一人社長の役員報酬はいくらがいい?決め方・税金・社会保険を徹底解説

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「一人会社を作ったけれど、役員報酬はいくらにすればいい?」

「会社に利益を残すのと、自分の給料を増やすのはどちらがいい?」

「役員報酬を高くすると節税になると聞いたけれど、社会保険料も増えるのでは?」

一人社長が会社を設立した直後に悩みやすいのが、自分自身の役員報酬をいくらに設定するかです。

役員報酬は、単純に「高いほど得」「低いほど得」と決められるものではありません。

役員報酬を増やせば会社側の利益は圧縮されやすくなる一方、社長個人では給与所得が増え、所得税・住民税や社会保険料にも影響します。

さらに、法人税上、役員給与を会社の損金に算入するためには一定のルールがあります。

この記事では、現役で税務会計実務に携わるスタッフの視点から、一人社長の役員報酬を決めるときに確認したいポイントを、税金・社会保険・会社利益・資金繰りまで含めてわかりやすく解説します。

【結論】役員報酬は「税金だけ」で決めない

一人社長の役員報酬には、すべての会社に共通する「月額○万円が正解」という金額はありません。

少なくとも次の4つを同時に確認して決める必要があります。

  • ① 会社にいくら利益が出る見込みか
  • ② 社長個人にいくら生活費が必要か
  • ③ 所得税・住民税・社会保険料がどう変わるか
  • ④ 会社にいくら運転資金を残す必要があるか

特に設立1期目は利益予測が難しいため、売上だけではなく固定費・借入返済・納税資金まで含めた資金繰りを確認してから決めることが重要です。

目次

そもそも役員報酬とは?

役員報酬とは、会社が取締役などの役員に対して支払う報酬です。

一人会社の場合は、

会社 → 社長個人

へ毎月支払う給与をイメージすると分かりやすいでしょう。

個人事業主の場合、事業で稼いだ利益は基本的に事業主本人の所得になります。

一方、法人を設立すると、会社と社長個人は別の主体になります。

そのため会社のお金を自由に社長個人へ移すのではなく、役員報酬など適切な形で支給・処理する必要があります。

役員報酬はいくらがいい?4つの基準で考える

では、実際にいくらにすればよいのでしょうか。

一人社長の場合、まずは次の4項目から考えてみましょう。

① 会社の年間利益を予測する

最初に確認したいのが、役員報酬を支払う前の会社利益です。

たとえば年間売上だけを見て役員報酬を決めるのではなく、

  • 売上
  • 仕入・外注費
  • 事務所家賃
  • 広告宣伝費
  • 会計ソフトなどの固定費
  • その他の必要経費

などを差し引き、会社にどの程度の利益が残るかを予測します。

利益予測が大きく外れると、役員報酬を支払った結果、会社の資金が不足することもあります。

② 社長個人に必要な生活費を確認する

税負担だけを優先して役員報酬を極端に低く設定すると、今度は社長個人の生活費が足りなくなる可能性があります。

住宅費・食費・教育費・ローン・貯蓄などを確認し、毎月いくら手元に必要なのかを把握しておきましょう。

役員報酬は「会社の税金」だけではなく、「社長自身の生活」も含めて設定する必要があります。

③ 税金と社会保険をセットで考える

役員報酬を受け取る社長側では、給与所得として所得税・住民税の対象になります。

給与所得については、給与収入そのものに所得税がかかるのではなく、原則として給与収入から給与所得控除などを反映して所得を計算します。

さらに法人化すると、社会保険についても確認が必要です。

法人事業所は、事業主のみの場合を含め、一定の要件のもと健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。

そのため、

「役員報酬を増やせば会社の法人税だけ下げられる」

という考え方では不十分です。

社長個人の所得税・住民税だけでなく、会社・本人双方が負担する社会保険料も含めて検討しましょう。

④ 会社に必要な現金を残す

一人会社で非常に重要なのが会社のキャッシュです。

帳簿上利益が出ていても、会社の銀行口座に十分な現金があるとは限りません。

たとえば、

  • 法人税等の納税
  • 消費税の納税
  • 社会保険料
  • 仕入代金
  • 外注費
  • 借入金返済
  • 設備投資

など、会社から現金が出ていくタイミングがあります。

役員報酬を高く設定しすぎて、会社に現金が残らなくなっては本末転倒です。

💡 現役税務スタッフのワンポイントアドバイス

実務では「税金を一番安くする金額」だけを探すより、会社の利益予測と資金繰りを先に作ることが重要です。特に設立1期目は売上予測が外れることもあるため、役員報酬を払っても会社の固定費・納税資金を確保できるかまで確認しておきましょう。

役員報酬を高くするとどうなる?

役員報酬を高く設定すると、一定の要件を満たして会社の損金に算入される場合、会社側の課税所得を圧縮する方向に働きます。

しかし、社長個人側では給与収入が増えるため、所得税・住民税や社会保険料への影響も考える必要があります。

項目 役員報酬を高くする場合の主な影響
会社利益 損金算入できれば利益を圧縮する方向
社長の給与収入 増える
所得税・住民税 個人側の課税関係に影響
社会保険 標準報酬月額等を通じ保険料に影響
会社の現金 毎月の支出が増える

つまり、役員報酬を増やすことは会社から個人へ所得・資金を移す側面があります。

会社だけを見て判断せず、会社と社長個人を合算して考えることがポイントです。

逆に役員報酬を低くしすぎるとどうなる?

では、役員報酬を低くして会社に利益を残せばよいのでしょうか。

これも単純ではありません。

役員報酬を低くすると会社側の利益が増えやすくなり、法人税等の負担にも影響します。

また、社長個人の生活費が不足すれば、結果として会社と個人のお金の管理が複雑になる原因にもなります。

高すぎても低すぎても問題が起こり得るため、会社と個人のバランスを見ることが重要です。

一人社長が絶対に知っておきたい「定期同額給与」

ここからが役員報酬で特に重要な税務ルールです。

法人が役員へ支給する給与は、支給すれば何でも自動的に会社の損金になるわけではありません。

代表的なものが「定期同額給与」です。

簡単にいうと、毎月など1か月以下の一定期間ごとに支給し、原則として各支給時期の金額が同額となっている給与です。

例:毎月30万円の役員報酬

4月:30万円
5月:30万円
6月:30万円
7月:30万円
…というように、毎月一定額を支給するイメージです。

役員給与には定期同額給与のほか、一定の要件を満たす事前確定届出給与などの制度もあります。

一方、利益が出たからといって年度途中に自由に役員報酬を増減すると、税務上の損金算入に影響する可能性があります。

役員報酬は途中で自由に変更できない?

ここも一人社長が非常に間違えやすいポイントです。

通常の定期給与の改定について、税務上の定期同額給与として扱われる改定には一定の要件があります。

一般的な改定では、原則として事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行われる改定が対象となります。

ただし、役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更など一定の臨時改定事由、経営状況が著しく悪化した場合など、別の取扱いが問題となるケースもあります。

⚠️ 「3か月以内なら何をしてもOK」という意味ではありません

役員給与の税務には細かな要件があります。「利益が出たから増額」「資金が足りないから自由に減額」といった変更は、損金算入に影響することがあります。変更前に税務上の取扱いを確認しましょう。

👉 役員報酬を変更できる時期や、期中の増額・減額について詳しく知りたい方は、 「役員報酬はいつ変更できる?定期同額給与と3か月ルール」 で詳しく解説しています。

一人社長でも社会保険は無視できない

「従業員がいない一人会社だから、社会保険には入らなくてもいい」と考えてしまう方もいます。

しかし、法人事業所については事業主のみの場合を含め、一定の要件のもと健康保険・厚生年金保険の適用対象になります。

そのため、役員報酬を決めるときは社会保険料の負担も重要です。

社会保険料には会社負担分と本人負担分があるため、

  • 社長の手取り
  • 会社の人件費

の両方に影響します。

「役員報酬=社長に振り込む金額」だけを見て予算を組まないよう注意しましょう。

💡 現役税務スタッフのワンポイントアドバイス

法人化シミュレーションでは、法人税だけを比較すると判断を誤ることがあります。役員報酬を決めるときは、会社負担分を含む社会保険料まで年間コストに入れて比較するのがポイントです。

役員報酬を決める実務的な5ステップ

一人社長で金額に迷ったら、次の順番で考えてみましょう。

STEP1|役員報酬を差し引く前の年間利益を予測
売上予測から経費を差し引き、年間の利益見込みを出します。

STEP2|社長個人に必要な年間生活費を計算
毎月いくらの手取りが必要なのか確認します。

STEP3|役員報酬の候補額を複数作る
1パターンだけでなく、複数の月額を比較します。

STEP4|会社+個人の税金・社会保険を比較
会社側だけでなく、社長個人まで含めて確認します。

STEP5|会社に残る現預金を確認
納税・固定費・投資資金を支払っても資金繰りに無理がないか確認します。

この手順なら「節税できるか?」だけではなく、会社を安全に運営できる役員報酬かという視点で判断できます。

役員報酬の設定に迷ったら法人化前にシミュレーションする

特にこれから個人事業主から法人化する場合は、会社を作ってから役員報酬を考えるより、法人化前にシミュレーションしておく方が判断しやすくなります。

たとえば、

  • 個人事業主のままの場合
  • 法人化して役員報酬を設定した場合
  • 会社に一定額の利益を残した場合

を比較すると、法人化そのものを含めて検討できます。

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まとめ|一人社長の役員報酬は「会社+個人」で決める

一人社長の役員報酬を決めるとき、最も避けたいのは法人税だけを見て金額を決めてしまうことです。

  • 会社の年間利益を予測する
  • 社長に必要な生活費を確認する
  • 所得税・住民税・社会保険まで考える
  • 会社に必要な運転資金を残す
  • 定期同額給与など役員給与の税務ルールを守る

役員報酬は、一度決めた後にいつでも自由に変更できるものとして考えるべきではありません。

だからこそ、会社設立時・事業年度開始時に利益予測を作り、複数の役員報酬パターンを比較してから決定することが重要です。

そして次に知っておきたいのが、「役員報酬はいつ変更できるのか?」というルールです。

次の記事では、定期同額給与の「3か月ルール」、年度途中で変更できるケース、変更するときの注意点を詳しく解説します。

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この記事を書いた人

biz-zeimu編集長(現役70社担当)のアバター biz-zeimu編集長(現役70社担当) 税務・会計メディア運営

東京都内の会計事務所に勤務する現役の税務・会計スタッフ。法人および個人事業主をあわせて常時70社以上の税務・会計実務をダイレクトに担当。現場で日々生じるリアルな決算・申告・経理課題の解決に携わる。

また、大学院において専門的な税法論文を執筆したバックグラウンドを持ち、法令に基づく厳密な理論と、現場の実務感覚の両面から正確な税務知識の追及を徹底している。

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実務経験に裏打ちされた一次情報と論理的根拠に基づき、事業者が本業に集中しながら最短で利益を最大化するための税務・会計ガイドを提供する。

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