法人化すると社会保険はいくら?一人社長の厚生年金・健康保険を解説

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「法人化すると社会保険料が高くなると聞いたけれど、実際はいくらかかる?」と気になっていませんか?

一人社長の会社でも、社長が常勤で働き、役員報酬を受け取る場合は、原則として健康保険・厚生年金への加入が必要です。負担を考えるときは、給与から引かれる本人負担だけでなく、会社負担も含めることが大切です。

この記事では、2026年度の保険料率を使い、役員報酬別の負担額、国民健康保険・国民年金との比較、法人化後の切り替えを現役税務会計スタッフが解説します。

この記事の結論

  • 一人社長でも、加入要件を満たせば社会保険への加入が必要
  • 月額報酬30万円の例では、本人・会社の合計負担は月86,220円
  • 保険料は役員報酬・年齢・加入する健康保険などで変わる
  • 国保との比較は、扶養家族を含めた世帯全体で行う
  • 法人化は、税金・社会保険料・会社の維持費を合わせて判断する

※月86,220円は、2026年4月分以降・協会けんぽ東京支部・40歳未満・標準報酬月額30万円・賞与なしの場合。会社負担の子ども・子育て拠出金を含みます。

目次

法人化すると一人社長でも社会保険に入る?

法人の事業所は、事業主だけの場合も含め、原則として健康保険・厚生年金の強制適用事業所です。株式会社だけでなく、合同会社にも同じ考え方が当てはまります。

例えば、社長一人で会社を経営し、毎月役員報酬を受け取っている場合、「従業員がいないから国保のままでよい」とは判断できません。常勤の社長が労務の対償として報酬を受け取る場合は、原則として加入対象になります。

ただし、法人の適用と、個々の役員が被保険者になるかどうかは分けて確認します。無報酬・非常勤などの場合は、勤務実態や報酬の状況を踏まえ、年金事務所へ確認しましょう。

赤字なら加入しなくてよい、という制度ではありません

会社の利益が少ないことや、設立直後で売上がないことだけで加入義務がなくなるわけではありません。加入要件を満たす場合は、社会保険料も毎月の固定的な支出として資金計画に入れましょう。

法人化後の社会保険料は何で決まる?

売上や利益ではなく、原則として報酬を基に計算する

健康保険・厚生年金の保険料は、原則として標準報酬月額×保険料率で計算します。標準報酬月額とは、毎月の報酬を一定の幅で区分し、保険料計算に使う金額です。

例えば、報酬月額が30万円なら標準報酬月額も30万円ですが、報酬月額40万円の場合は標準報酬月額41万円となります。実際の役員報酬に料率を掛けるだけでは、正確な金額にならない場合があります。

報酬には、基本の役員報酬だけでなく、通勤手当や一定の現物給与なども含まれます。賞与を支給する場合は、原則として賞与にも別途保険料がかかります。

2026年度は「支援金」と「拠出金」を分けて確認する

2026年4月分からは、健康保険料とあわせて子ども・子育て支援金を負担します。一方、従来からある子ども・子育て拠出金は会社だけが負担する別の制度です。

項目 料率 負担する人
健康保険 9.85% 本人・会社で折半
厚生年金 18.3% 本人・会社で折半
子ども・子育て支援金 0.23% 本人・会社で折半
介護保険 1.62% 原則40〜64歳の本人・会社で折半
子ども・子育て拠出金 0.36% 会社が全額負担

※2026年4月分以降の協会けんぽ東京支部を例にしています。健康保険料率は都道府県・加入先で異なります。健康保険と厚生年金では標準報酬月額の上限・下限も異なります。

役員報酬別|本人負担・会社負担はいくら?

次の表は、40歳未満・協会けんぽ東京支部・賞与なし・通勤手当などの追加報酬なしのケースです。会社負担には、子ども・子育て拠出金も含めています。

役員報酬/月 標準報酬月額 本人負担/月 会社負担/月 合計/月
20万円 20万円 28,380円 29,100円 57,480円
30万円 30万円 42,570円 43,650円 86,220円
40万円 41万円 58,179円 59,655円 117,834円
50万円 50万円 70,950円 72,750円 143,700円

※40万円の行は、各保険の折半額を円未満の端数処理前で合計した目安です。実際の給与控除額等は端数処理によって数円異なる場合があります。年間額を比較する場合は、年度途中の料率変更にも注意してください。

月額報酬30万円なら、会社の支出は月34万円超

月額報酬30万円の場合、本人負担42,570円を引くと、所得税・住民税を差し引く前の金額は257,430円です。

会社側は、額面の役員報酬30万円に会社負担43,650円を加え、月343,650円を見込む必要があります。本人負担は額面報酬から預かるため、会社の費用としてさらに二重に加えるものではありません。

本人・会社の保険料等の合計86,220円が12か月続くと、年額は1,034,640円です。ただし、これは法人化によって増える金額そのものではありません。比較するときは、個人事業のまま支払う国保・国民年金を差し引いて考えます。

40〜64歳なら介護保険料も加わる

同じ標準報酬月額30万円でも、40〜64歳では介護保険料が本人・会社それぞれ月2,430円加わります。この例では、本人負担45,000円、会社負担46,080円、合計月91,080円です。

現役税務会計スタッフのワンポイント

法人化前の資金計画では、「社長の手取り」「会社が払う役員報酬+会社負担」「本人・会社を合わせた保険料」を別々に並べましょう。この3つを混ぜると、生活費が足りなくなったり、会社の支出を二重計上したりしやすくなります。

国民健康保険・国民年金より高くなる?

法人化後の社会保険料が必ず高くなるとは限りません。現在の国保の金額、役員報酬、家族構成によって結果が変わります。

比較項目 個人事業主 法人化後
医療保険 主に国民健康保険 協会けんぽなどの健康保険
主な計算基準 前年所得・加入人数・自治体など 標準報酬月額・標準賞与額など
年金 国民年金が基本 基礎年金に厚生年金が上乗せ
家族の扱い 国保に被扶養者の制度はない 条件を満たす家族を被扶養者にできる

現在の国保通知書を使って比べる

国保は自治体や前年所得などで金額が異なるため、全国一律の金額では比較できません。まずは納税通知書・納入通知書で、世帯の年間負担を確認しましょう。

2026年度の国民年金保険料は、通常の定額で1人あたり月17,920円です。例えば、国保が年48万円という仮定なら、本人1人の国民年金を加えた年間負担は695,040円となります。

前述の月額報酬30万円・40歳未満の法人の例は、本人・会社合計で年1,034,640円なので、単純差は年339,600円です。これは仮定の比較であり、国保の軽減、家族の負担、税金の減少効果などは含めていません。

家族が扶養に入れるかで、世帯の負担が変わる

健康保険では、収入や生計維持関係などの条件を満たす家族を被扶養者にできます。被扶養者が増えた人数に応じて、健康保険料が上乗せされる仕組みではありません。

また、20歳以上60歳未満の配偶者が国民年金の第3号被保険者に該当すれば、その配偶者自身が国民年金保険料を納める必要はありません。ただし、配偶者が勤務先で社会保険の加入対象になる場合などは別です。

社長本人の負担だけでなく、配偶者・子どもを含めた世帯全体で比較しましょう。社会保険は将来の年金や給付にも関わるため、保険料の安さだけで評価しないことも大切です。

「自分の利益や家族構成では、法人化後にいくら残るのか」が気になる方は、税金・社会保険料・維持費を合わせた試算を準備しましょう。法人化専門の税理士への無料相談は、比較の前提を整理するきっかけになります。

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法人化後の社会保険への切り替え手順

手続きは、会社を加入させるものと、社長・従業員を加入させるものに分かれます。主な流れは次のとおりです。

手続き 確認すること
① 新規適用届 会社の加入手続き。原則として加入要件を満たした事実の発生から5日以内
② 被保険者資格取得届 社長・従業員の加入手続き。原則として資格取得の事実発生から5日以内
③ 家族の扶養手続き 対象者がいる場合に被扶養者届などを提出。収入・続柄等の確認資料を準備
④ 国保の脱退 新しい健康保険の加入を確認し、市区町村で原則14日以内に手続き

新規適用届・資格取得届などは、日本年金機構へ提出します。国保の脱退は自動ではないため、新しい資格情報を確認できる書類などを用意し、市区町村の案内に沿って進めましょう。

厚生年金の資格取得手続きにより、国民年金の加入区分も変更されます。国民年金を前納・口座振替している場合は、還付や引落しの扱いも確認しておくと安心です。

税負担の比較は税理士、社会保険の加入判定・届出の詳細は年金事務所や社会保険労務士が相談先です。手続きの代行を依頼する場合は、対応範囲と費用も確認しましょう。

法人化前にそろえておきたい資料

比較を具体的にするには、次の資料が役立ちます。概算相談の段階なら、まず手元にあるものから整理しましょう。

  • 直近の確定申告書と、今年の利益見込み
  • 現在の国保・国民年金の年間負担額
  • 役員報酬の候補額と、毎月必要な生活費
  • 家族の年齢・収入・健康保険の加入状況
  • 会社の設立時期と、設立後の固定費の見込み

現役税務会計スタッフのワンポイント

比較には、国保の「1回の引落額」より通知書に書かれた年間額を使うのがおすすめです。納付回数が12回とは限らないため、引落額をそのまま12倍すると比較がずれることがあります。法人側も、役員報酬を2〜3パターン用意すると、生活費と会社の資金繰りを両立できる範囲が見えてきます。

毎年続く負担を見積もってから会社を設立すると、設立後の資金不足を防ぎやすくなります。法人化するか迷っている段階でも、まずは自分の数字で比較してみましょう。

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よくある質問

会社員が副業で法人を作った場合、本業の社会保険だけでよいですか?

本業と自分の法人の両方で加入要件を満たす場合は、両方の事業所で手続きが必要です。「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出し、原則として両方の報酬を合算して標準報酬月額を決め、各事業所の報酬に応じて保険料を按分します。本業で加入済みという理由だけで、自分の法人の手続きが不要になるわけではありません。

役員報酬を下げれば、翌月から社会保険料も下がりますか?

通常、すぐには下がりません。固定的な報酬が変わり、その後3か月の平均報酬による標準報酬月額が従来と2等級以上違うなどの条件を満たすと、原則として変更後の報酬を受けた月から4か月目に改定されます。役員報酬の変更には税務上の論点もあるため、保険料だけで変更時期を決めないようにしましょう。

一人社長も雇用保険に入り、失業給付を受けられますか?

代表取締役は、原則として雇用保険の被保険者になりません。健康保険・厚生年金に加入することと、雇用保険に加入することは別です。代表権のない役員で、従業員としての実態がある場合などは扱いが異なるため、ハローワークで確認してください。

まとめ|社会保険は本人・会社・家族を合わせて比較する

法人化後の社会保険料は、役員報酬や年齢、加入先によって変わります。一人社長は、給与明細の天引き額だけでなく、会社負担と家族の保険も含めて比較することが大切です。

現在の国保・国民年金、法人化後の税金と社会保険料、毎年の維持費を並べ、自分の事業に合う時期を判断しましょう。

参考資料

※保険料の試算は2026年度の公表資料に基づきます。加入条件・実際の保険料・必要書類は、加入先や年金事務所などでご確認ください。

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この記事を書いた人

biz-zeimu編集長(現役70社担当)のアバター biz-zeimu編集長(現役70社担当) 税務・会計メディア運営

東京都内の会計事務所に勤務する現役の税務・会計スタッフ。法人および個人事業主をあわせて常時70社以上の税務・会計実務をダイレクトに担当。現場で日々生じるリアルな決算・申告・経理課題の解決に携わる。

また、大学院において専門的な税法論文を執筆したバックグラウンドを持ち、法令に基づく厳密な理論と、現場の実務感覚の両面から正確な税務知識の追及を徹底している。

本メディア(biz-zeimu)では、多忙な一人社長や個人事業主に向けて、以下のノウハウを忖度なく発信。

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実務経験に裏打ちされた一次情報と論理的根拠に基づき、事業者が本業に集中しながら最短で利益を最大化するための税務・会計ガイドを提供する。

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