個人事業主として利益が出てくると、 気になるのが 「所得税はいくら払うのか」 という点です。
しかし所得税は、 売上にそのまま税率を掛けて計算するわけではありません。
売上から必要経費を引き、さらに青色申告特別控除や基礎控除・社会保険料控除などを差し引いた「課税所得」 に対して税率を適用します。
さらに2026年分の所得税では、 基礎控除が改正され、 合計所得金額489万円以下の方は 最大104万円 となっています。
この記事では、 個人事業主向けに 2026年分の所得税率・計算方法・基礎控除・青色申告特別控除・復興特別所得税 まで、 具体例を使って分かりやすく解説します。
まず結論
・所得税は売上にかかる税金ではない → 利益や所得控除を反映した「課税所得」に対して計算
・2026年分の所得税率 → 5%~45%の7段階
・2026年分の基礎控除 → 合計所得金額489万円以下なら104万円
・青色申告 → 要件を満たせば最高65万円の青色申告特別控除
・国民年金・国民健康保険など → 社会保険料控除の対象
・所得税とは別に → 復興特別所得税(原則として所得税額の2.1%)も計算
個人事業主の所得税は売上ではなく「所得」で決まる
所得税を計算するとき、 最初に理解しておきたいのが 売上と所得は違う ということです。
たとえば、 年間売上が800万円あったとしても、 800万円に所得税率を掛けるわけではありません。
まず、 事業を行うためにかかった必要経費を差し引きます。
売上 - 必要経費
= 事業の利益
さらに青色申告者であれば、 要件に応じて青色申告特別控除を差し引きます。
その後、 基礎控除・社会保険料控除・生命保険料控除などの 所得控除 を差し引いて課税所得を計算します。
個人事業主の所得税の計算方法
基本的な流れは次のとおりです。
所得税計算の基本的な流れ
① 売上 - 必要経費
② 青色申告特別控除などを反映
③ 所得から基礎控除・社会保険料控除などを差し引く
④ 課税所得 × 所得税率 - 速算表の控除額
⑤ 税額控除・源泉徴収税額などを反映し、復興特別所得税も計算
計算式で見るとこうなる
事業所得
= 売上 - 必要経費 - 青色申告特別控除など
課税所得
= 所得金額 - 所得控除
所得税額
= 課税所得 × 税率 - 速算表の控除額
現役税務会計スタッフのワンポイント
「売上500万円なら税率20%?」 と考えてしまう方もいますが、 税率を掛けるのは売上ではなく、最終的な課税所得 です。 まずは売上・経費・控除を順番に整理しましょう。
【2026年】個人事業主の所得税率は5%~45%
所得税は、 所得が増えるほど税率が段階的に高くなる 超過累進税率 を採用しています。
2026年分の所得税率は、 5%から45%までの7段階です。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
税率20%なら所得全部に20%かかるわけではない
所得税で特に誤解されやすいのが、 税率の考え方です。
たとえば、 課税所得が500万円の場合、
500万円 × 20% = 100万円
がそのまま所得税になるわけではありません。
速算表を使うと、
5,000,000円 × 20% - 427,500円
= 572,500円
となります。
これは、 所得税が段階的に税率を適用する 超過累進税率だからです。
税率が上がっても所得全部に高い税率がかかるわけではない
「課税所得が330万円を少し超えたら、 全額が20%になる」 という仕組みではありません。 高い税率は、その税率の段階に該当する部分へ適用 されます。
【2026年改正】基礎控除は最大104万円
2026年分の所得税で特に重要なのが、 基礎控除の改正 です。
基礎控除は、 所得税を計算するときに 所得金額から差し引くことができる所得控除です。
2026年分は、 本人の合計所得金額に応じて 次の金額となります。
| 合計所得金額 | 2026年分の基礎控除 |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
個人事業主の場合も、 給与所得者と同じく 本人の 合計所得金額 によって基礎控除額を判定します。
売上金額で104万円・67万円を判定するわけではありません。
現役税務会計スタッフのワンポイント
2025年分と2026年分では基礎控除額が違います。 2026年分の確定申告をするときに、 古い「48万円」「58万円」「95万円」などの記事だけを見て計算しない ように注意しましょう。
青色申告なら最高65万円を所得から差し引ける
個人事業主が青色申告をしている場合には、 一定の要件を満たすことで 最高65万円の青色申告特別控除 を受けられます。
青色申告特別控除には、 主に
- 65万円
- 55万円
- 10万円
があります。
55万円控除では、 複式簿記による記帳、 貸借対照表・損益計算書の添付、 期限内申告などの要件があります。
さらに65万円控除を受けるには、 55万円控除の要件に加えて、 e-Taxによる期限内の電子申告 または一定の電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。
65万円控除=税金が65万円減るわけではない
青色申告特別控除は 税額から65万円を直接引く制度ではなく、 所得金額から最大65万円を差し引く制度 です。 実際に減る税額は、その人の所得・税率によって異なります。
国民年金・国民健康保険は「経費」ではなく所得控除
個人事業主が支払う
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料・国民健康保険税
- 国民年金基金の掛金
- 一定の介護保険料
などは、 原則として事業の必要経費ではありません。
その代わり、 社会保険料控除 として所得から差し引きます。
社会保険料控除の対象となるものは、 原則としてその年に実際に支払った金額の全額を 所得控除できます。
「経費ではないから税金に関係しない」 というわけではありません。
所得税を減らす主な所得控除
個人事業主が利用することの多い所得控除には、 次のようなものがあります。
| 所得控除 | 主な内容 |
|---|---|
| 基礎控除 | 本人の合計所得金額に応じて控除 |
| 社会保険料控除 | 国民年金・国民健康保険など |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済・iDeCoなど一定の掛金 |
| 生命保険料控除 | 一定の生命保険料 |
| 医療費控除 | 一定額を超える医療費等 |
| 配偶者控除・扶養控除等 | 一定の要件を満たす配偶者・扶養親族 |
【具体例】売上800万円なら所得税はいくら?
ここからは、 具体的な数字を使って計算してみましょう。
次のような個人事業主を例にします。
売上:8,000,000円
必要経費:3,000,000円
青色申告特別控除:650,000円
社会保険料控除:800,000円
その他の所得・所得控除・税額控除:なしと仮定
① 売上から必要経費を引く
8,000,000円 - 3,000,000円
= 5,000,000円
② 青色申告特別控除65万円を引く
5,000,000円 - 650,000円
= 4,350,000円
この例では、 他の所得がないものとすると 合計所得金額は435万円となるため、 2026年分の基礎控除は 104万円 です。
③ 基礎控除・社会保険料控除を引く
4,350,000円
- 基礎控除1,040,000円
- 社会保険料控除800,000円
= 課税所得2,510,000円
④ 所得税を計算する
課税所得2,510,000円は、 所得税率10%の区分です。
2,510,000円 × 10% - 97,500円
= 153,500円
⑤ 復興特別所得税を計算する
所得税とは別に、 原則として基準所得税額の2.1%に相当する 復興特別所得税を計算します。
153,500円 × 2.1%
= 3,223円
所得税+復興特別所得税
= 156,723円
したがって、 この単純化した例では 所得税・復興特別所得税は 約15万7,000円 となります。
実際の納税額は人によって大きく変わる
配偶者・扶養親族、生命保険料、iDeCo、小規模企業共済、 医療費控除、寄附金控除、税額控除、源泉徴収税額などによって 実際の申告納税額は変わります。 売上800万円なら必ず約15万7,000円という意味ではありません。
課税所得ごとの所得税はいくら?
各種控除を差し引いた後の 課税所得 を基準にすると、 おおよその所得税は次のようになります。
| 課税所得 | 所得税 | 復興特別所得税を含む概算 |
|---|---|---|
| 150万円 | 75,000円 | 約76,600円 |
| 300万円 | 202,500円 | 約206,800円 |
| 500万円 | 572,500円 | 約584,500円 |
| 800万円 | 1,204,000円 | 約1,229,300円 |
この表は、 売上でも事業所得でもなく「課税所得」 に対する計算例です。
実際には税額控除や源泉徴収税額なども反映されるため、 最終納付額とは異なる場合があります。
源泉徴収されている個人事業主は差し引いて計算する
フリーランス・士業・デザイナー・ライターなどでは、 取引先から報酬を受け取る際に 所得税等が源泉徴収されていることがあります。
この源泉徴収税額は、 経費ではありません。
確定申告で年間の所得税額を計算したあと、 すでに源泉徴収されている税額を差し引きます。
年間の本来の税額より 源泉徴収された金額の方が多ければ、 還付を受けられる場合があります。
復興特別所得税とは?
2013年分から2037年分まで、 所得税とあわせて 復興特別所得税 を申告・納付します。
原則として、 基準所得税額に 2.1% を掛けて計算します。
たとえば所得税額が300,000円なら、
300,000円 × 2.1%
= 6,300円
となり、 所得税と合わせて306,300円となります。
所得税以外の税金も忘れない
個人事業主が利益を出した場合、 所得税だけを見て資金を残しておくと、 後から資金繰りが厳しくなることがあります。
所得・事業内容によっては、
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
なども発生します。
さらに国民健康保険料なども 前年所得等によって変動することがあります。
「所得税が15万円だから税金全部で15万円」ではありません。
2026年分の所得税はいつ払う?
2026年分(令和8年分)の所得税・復興特別所得税の確定申告期限と納期限は、 2027年3月15日 です。
なお、 一定額以上の所得税が発生した方については、 翌年以降に 予定納税 が必要になる場合があります。
予定納税がある場合には、 通常の確定申告だけでなく 7月・11月頃にも所得税の支払いが発生するため、 資金繰りに注意しましょう。
所得税を減らすために経費を無理に増やす必要はない
所得税は課税所得が少なくなれば減ります。
しかし、 税金を減らすためだけに 不要なものを購入するのは本末転倒です。
たとえば、 100,000円の事業経費を増やしたとしても、 100,000円そのものが税金から返ってくるわけではありません。
税率10%の所得帯なら、 単純な所得税部分への影響は おおむね10,000円程度です。
10,000円の税金を減らすために100,000円を無駄遣いする ような節税は避けましょう。
現役税務会計スタッフのワンポイント
節税で優先したいのは、 本来経費にできるものを漏らさないこと、 青色申告特別控除を正しく受けること、 利用できる所得控除を漏らさないこと です。 不要な支出を増やすこととは分けて考えましょう。
所得税の計算は会計ソフトを使うと楽になる
個人事業主の所得税を計算するには、 まず正しい事業所得を確定させる必要があります。
そのためには、
- 売上
- 必要経費
- 減価償却費
- 売掛金・買掛金
- クレジットカード
- 銀行口座
などを正しく記帳する必要があります。
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個人事業主の所得税チェックリスト
□ 売上と所得を混同していない
□ 必要経費を漏れなく集計した
□ 青色申告特別控除を確認した
□ 2026年分の基礎控除額を確認した
□ 国民年金・国民健康保険等の社会保険料控除を確認した
□ iDeCo・小規模企業共済などの所得控除を確認した
□ 課税所得に速算表の税率を適用した
□ 復興特別所得税を計算した
□ 源泉徴収税額・予定納税額を確認した
□ 所得税以外の住民税・個人事業税等も資金として残した
よくある質問
Q. 個人事業主の所得税率は何%ですか?
2026年分の所得税率は、 課税所得に応じて 5%~45%の7段階 です。
Q. 売上500万円なら所得税はいくらですか?
売上だけでは計算できません。
必要経費・青色申告特別控除・基礎控除・社会保険料控除などを差し引き、 最終的な課税所得を計算する必要があります。
Q. 利益500万円なら税率20%ですか?
必ずしもそうではありません。
利益から青色申告特別控除や所得控除などを差し引いた 課税所得 によって税率が決まります。
Q. 2026年の基礎控除はいくらですか?
合計所得金額489万円以下であれば 104万円 です。
489万円超655万円以下なら67万円、 655万円超2,350万円以下なら62万円となります。
Q. 青色申告なら所得税が65万円安くなりますか?
いいえ。
65万円は税額から直接差し引くのではなく、 所得金額から差し引く青色申告特別控除 です。
Q. 国民健康保険や国民年金は経費になりますか?
原則として事業の必要経費ではありません。
ただし、 社会保険料控除として 所得税計算上の所得から差し引くことができます。
Q. 所得税率20%なら100万円稼ぐと20万円税金が増えますか?
「追加で増えた課税所得」が20%の税率区分に該当する範囲では、 所得税部分への影響を考える目安になります。
ただし、 実際には所得控除・税額控除・復興特別所得税などもあるため、 単純にすべて20%とは限りません。
Q. 所得税を払うのはいつですか?
2026年分の所得税・復興特別所得税の 確定申告期限・納期限は 2027年3月15日 です。
一定の場合には、 7月・11月に予定納税が必要となることもあります。
まとめ|所得税は「売上-経費」だけでは決まらない
個人事業主の所得税は、 単純に売上へ税率を掛けて計算するものではありません。
売上から必要経費を差し引き、 青色申告特別控除・基礎控除・社会保険料控除などを反映した 課税所得 を求め、 その金額に所得税率を適用します。
特に2026年分は 基礎控除が改正されているため、 古い金額のまま計算しないように注意しましょう。
この記事のまとめ
・所得税は売上ではなく課税所得を基に計算する
・2026年分の所得税率は5%~45%
・2026年分の基礎控除は最大104万円
・489万円超655万円以下の基礎控除は67万円
・655万円超2,350万円以下は62万円
・青色申告特別控除は最高65万円
・社会保険料などの所得控除も忘れない
・所得税とは別に復興特別所得税も計算する
・住民税・個人事業税などは所得税とは別に発生する
現役税務会計スタッフのワンポイント
所得税を計算するときは、 「売上 → 必要経費 → 青色申告特別控除 → 所得控除 → 税率」 の順番で整理すると分かりやすくなります。 2026年分は基礎控除の改正もあるため、前年と同じ金額で計算しないよう注意しましょう。
所得税の計算で迷っているケースはありますか?
「売上○万円なら所得税はいくら?」 「青色申告65万円控除を使っている」 「会社員の副業もある」など、 記事を読んでも分かりにくかった点があればコメントで教えてください。 今後の記事・FAQ作成の参考にさせていただきます。
参考:公的情報
2026年分の所得税率・基礎控除・青色申告特別控除・所得控除・申告期限については、 国税庁の最新情報も確認してください。

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