「一人で会社を作るなら、株式会社と合同会社のどっちがいい?」
「合同会社の方が安いと聞いたけど、デメリットはない?」
「税金や社会保険も株式会社と合同会社で変わる?」
一人会社の設立を考え始めると、多くの方が迷うのが「株式会社と合同会社のどちらを選ぶか」です。
設立費用だけを比較すると合同会社の方が抑えやすい一方、会社形態は初期費用だけで決めるものではありません。
定款認証・役員任期・決算公告・出資者と経営者の関係・将来の資金調達など、会社を作った後の運営方法にも違いがあります。
また、「合同会社にすれば法人税が安くなる」という単純な違いがあるわけでもありません。
この記事では、現役で税務会計実務に携わるスタッフの視点から、株式会社と合同会社の違いを「設立費用・税金・運営・信用・将来性」の5つの軸で比較します。
【まず結論】費用だけではなく「会社をどう使うか」で選ぶ
株式会社と合同会社には、それぞれ異なる特徴があります。
- 設立時の法定費用を抑えたい → 合同会社は選択肢になりやすい
- 株式による出資・将来の資金調達を考えている → 株式会社の仕組みを検討
- 一人または少人数でシンプルに経営したい → 合同会社の仕組みと相性を確認
- 会社形態を取引先が重視する事業 → 相手先・業界の実情まで確認
「株式会社だから必ず有利」「合同会社だから必ず不利」と決めつけず、今後どんな会社にしたいかから逆算することが重要です。
株式会社と合同会社の違いを一覧で比較
まずは、主な違いを一覧で確認してみましょう。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者 | 株主 | 社員 |
| 経営 | 取締役など | 原則として社員が業務を執行 |
| 一人設立 | 可能 | 可能 |
| 定款認証 | 必要 | 不要 |
| 設立登記の登録免許税 | 資本金×0.7% 最低15万円 |
資本金×0.7% 最低6万円 |
| 役員等の任期 | 取締役は原則2年 一定の非公開会社は定款で最長10年 |
株式会社の取締役のような法定任期なし |
| 決算公告 | 原則必要 | 株式会社のような決算公告義務なし |
| 株式発行 | 可能 | 株式制度なし |
違い①|設立費用は合同会社の方が抑えやすい
最も分かりやすい違いが会社設立時の法定費用です。
株式会社の登録免許税
株式会社の設立登記にかかる登録免許税は、
資本金 × 0.7%(最低15万円)
です。
さらに株式会社では定款について公証人の認証を受ける必要があり、定款認証に関する費用も発生します。
合同会社の登録免許税
合同会社の場合は、
資本金 × 0.7%(最低6万円)
です。
また、合同会社の定款には公証人による認証が必要ありません。
そのため、同程度の資本金で小規模な会社を設立するケースでは、一般に合同会社の方が設立時の法定費用を抑えやすくなります。
💡 現役税務スタッフのワンポイントアドバイス
設立費用の差は分かりやすいため、ここだけを見て合同会社を選びたくなります。ただし会社は設立して終わりではありません。数万円の初期費用だけでなく、今後の取引・出資・経営体制まで含めて判断することが重要です。
🏢 会社を作る手続きから確認したい方へ
会社設立 【2026年最新】一人会社の作り方|株式会社・合同会社の設立手続き・費用を完全解説違い②|株式会社と合同会社で法人税が単純に変わるわけではない
ここは誤解しやすいポイントです。
「合同会社にすれば株式会社より法人税率が安くなる」という単純な仕組みではありません。
株式会社も合同会社も法人であり、法人税については会社形態の名称だけではなく、資本金・所得金額・法人の区分などによって税率が判定されます。
つまり、
- 株式会社だから税金が高い
- 合同会社だから税金が安い
と会社形態だけで判断するのは適切ではありません。
法人化による税負担を考える場合は、法人税だけではなく、社長個人の所得税・住民税・社会保険料・役員報酬まで含めて考える必要があります。
⚠️ 「合同会社なら節税できる」で選ばない
株式会社と合同会社の選択と、個人事業主から法人化することで税負担がどう変わるかは別の問題です。会社形態だけを理由に節税額を判断しないようにしましょう。
違い③|株式会社には取締役の任期がある
一人会社の場合に意外と見落とされやすいのが、役員等の任期です。
株式会社の取締役の任期は原則として2年です。
ただし、株式の譲渡制限を設けている一定の非公開会社では、定款によって最長10年まで伸長できます。
同じ人が引き続き取締役を続ける場合でも、任期満了に伴って再任すれば変更登記が必要になります。
一方、合同会社の業務執行社員には、株式会社の取締役と同様の法定任期はありません。
一人で長期間会社を経営する場合には、こうした運営上の違いも比較ポイントになります。
違い④|株式会社には決算公告がある
株式会社では、原則として定時株主総会の終結後に貸借対照表などを公告する決算公告が必要です。
一方、合同会社には株式会社と同様の決算公告義務はありません。
「会社設立費用」だけではなく、設立後に必要となる会社法上の手続きまで比較すると、両者の違いが見えやすくなります。
違い⑤|会社の所有と経営の仕組みが違う
株式会社は「株主」と「取締役」
株式会社では、出資者である株主と、会社を経営する取締役という仕組みがあります。
もちろん一人会社であれば、自分一人が株主兼取締役になることもできます。
一方で、将来的に株式を利用して他の人から出資を受けるといった仕組みを取りやすいのも株式会社の特徴です。
合同会社は「社員」が出資者
合同会社では、出資者を会社法上「社員」と呼びます。
ここでいう社員は「従業員」という意味ではありません。
原則として社員が業務を執行する仕組みとなっており、定款によって業務執行社員を定めることもできます。
一人合同会社であれば、一人の社員が出資と経営を担うシンプルな形にできます。
違い⑥|「株式会社の方が信用される」とは限らない
会社形態を選ぶ際によく聞くのが、
「株式会社の方が信用力が高い」
という話です。
ただし、これは税法や会社法で「株式会社の方が信用力が高い」と決められているわけではありません。
実際の取引では、
- 会社の業績
- 資本金
- 取引実績
- 代表者の経歴
- 財務状況
- 業界慣行
- 取引先側の審査基準
など、さまざまな要素で判断されます。
一方で、取引先・顧客・採用候補者などが会社形態をどのように受け止めるかは、業界や相手によって異なる可能性があります。
特定の企業との取引を予定している場合は、契約条件や取引先の基準を事前に確認しておくと安心です。
違い⑦|将来の資金調達・事業拡大も考える
現在は一人会社でも、数年後まで一人とは限りません。
将来的に、
- 共同経営者を迎える
- 外部から出資を受ける
- 事業を大きくする
- 株式を活用した資金調達を行う
といった計画がある場合は、その将来像まで含めて会社形態を選ぶことが重要です。
株式会社には株式という仕組みがあります。
一方、合同会社は株式を発行する会社ではありません。
「今の自分一人だけ」を基準にするのではなく、3年後・5年後にどのような会社にしたいかまで考えてみましょう。
株式会社が選択肢になりやすいケース
たとえば、次のような場合には株式会社の仕組みを詳しく検討する価値があります。
- 将来的に株式による出資を受ける可能性がある
- 複数人で事業を拡大していく予定がある
- 取引先が会社形態を重視する可能性がある
- 株式会社の組織設計が事業計画に合っている
- 設立時の法定費用より将来の事業展開を重視する
ただし、これらに該当したから必ず株式会社にすべきという意味ではありません。
合同会社が選択肢になりやすいケース
一方、次のような場合には合同会社の仕組みも比較してみましょう。
- 一人または少人数で会社を運営する予定
- 設立時の法定費用を抑えたい
- 株式会社の取締役のような法定任期を避けたい
- 株式による資金調達を予定していない
- 会社形態より事業そのものを重視するビジネス
💡 現役税務スタッフのワンポイントアドバイス
会社形態を考えるときは「どっちが得か?」だけでなく、「誰と経営するのか」「外部出資を受けるのか」「どんな取引先を相手にするのか」まで書き出してみると判断しやすくなります。税金だけで会社形態を決めないことがポイントです。
一人会社なら特に「役員報酬」まで考えておこう
株式会社・合同会社のどちらを選んでも、法人化後の税金や資金繰りを考えるうえで重要になるのが社長自身への報酬です。
一人会社では、
- 会社にどのくらい利益を残すか
- 自分へいくら支給するか
- 所得税・住民税がどう変わるか
- 社会保険料をどの程度見込むか
- 会社の運転資金をいくら残すか
をセットで考える必要があります。
さらに、法人税上、役員給与を損金算入するためには一定の要件があります。
そのため、会社を設立してから何となく金額を決めるのではなく、設立前から利益見込みと役員報酬をシミュレーションしておくことが重要です。
💰 会社形態が決まったら、次は「役員報酬」へ
次に読む 【2026年最新】一人社長の役員報酬はいくらがいい?決め方・税金・社会保険を徹底解説株式会社・合同会社を選んだ後は、社長自身への役員報酬も重要です。税金だけでなく、社会保険・会社利益・手取り・資金繰りまで含めた決め方を解説しています。
それでも株式会社・合同会社を決められない場合は?
ここまで比較しても、
- 自分の場合はどちらが合っているのか分からない
- 法人化した場合の税負担も比較したい
- 役員報酬まで含めてシミュレーションしたい
- そもそも今法人化すべきなのか分からない
という方もいるでしょう。
特に個人事業主から法人成りする場合、会社形態だけでなく、法人化そのものが現在の事業規模に合っているかも一緒に確認した方が判断しやすくなります。
まとめ|株式会社と合同会社は将来像まで考えて選ぼう
株式会社と合同会社には、設立費用だけでなく会社運営の仕組みにも違いがあります。
- 合同会社は設立時の法定費用を抑えやすい
- 株式会社は定款認証が必要
- 合同会社は定款認証不要
- 株式会社の取締役には任期がある
- 株式会社には原則として決算公告義務がある
- 合同会社だから法人税率が単純に安くなるわけではない
- 将来の出資・事業拡大まで考えて会社形態を選ぶ
一人会社では現在の設立費用だけに目が向きがちですが、会社は設立後も何年も運営していきます。
「今いくら安く作れるか」ではなく、「どのような会社を作りたいか」を基準に比較してみましょう。
そして会社形態が決まったら、次に重要になるのが一人社長の役員報酬です。
次の記事では、役員報酬をいくらにするかについて、会社利益・税金・社会保険・資金繰りの関係から詳しく解説します。

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