個人事業主として仕事をしていると、 セミナー・オンライン講座・資格試験・専門書など、 仕事に必要な知識やスキルを身につけるためにお金を使うことがあります。
そこで気になるのが、 「資格取得費やセミナー代は経費にできるの?」 という点です。
結論からいうと、 現在行っている事業の遂行に直接必要な技能・知識を習得するための研修費などは、 必要経費として認められる可能性があります。
一方で、 「仕事に役立ちそうだから」という理由だけで、 資格学校や受験料などをすべて経費にできるわけではありません。
この記事では、 セミナー代・資格取得費・受験料・オンライン講座・教材費・交通費などについて、 経費になる判断基準から勘定科目・仕訳・証拠の残し方まで、 個人事業主向けに実務目線で解説します。
まず結論
現在の事業を行うために直接必要な知識・技能を習得するセミナーや研修で、 通常必要と認められる金額であれば必要経費にできる可能性があります。
一方、新しい職業に就くための資格取得や、 現在の事業との直接的な関係が弱い自己啓発・教育費については慎重な判断が必要です。
ポイントは、 「役に立つか」ではなく「現在の事業の遂行に直接必要か」 という点です。
資格取得費・セミナー代は経費になる?早見表
まずは代表的な支出について、基本的な考え方を確認しましょう。
| 支出例 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 現在の仕事に直接関係する専門セミナー | ○になりやすい |
| 現在の業務に必要な技能研修 | ○になりやすい |
| 業務用ソフト・ツールの操作研修 | ○を検討 |
| セミナーの教材・テキスト | 業務との関係から○を検討 |
| 研修会場までの交通費 | 研修が業務上必要なら○を検討 |
| 現在の業務に必要な資格の更新研修 | 直接必要性から判断 |
| 新しい職業に就くための資格学校 | 慎重な判断が必要 |
| 将来始める予定の別事業の資格 | 現在の事業との直接性が弱い |
| 趣味・一般的な自己啓発 | 原則として難しい |
現役税務会計スタッフのワンポイント
「仕事に役立つ」という理由だけではなく、 現在行っている仕事と具体的にどう関係しているのかまで説明できることが重要です。 セミナー名だけでは分かりにくい場合は、会計ソフトの摘要欄などに受講目的も残しておきましょう。
セミナー代・研修費は経費になる?
国税庁の所得税基本通達では、 業務を営む人やその使用人が その業務の遂行に直接必要な技能・知識を習得したり、 研修を受けたりするための費用について、 通常必要とされるものであれば必要経費に算入するとしています。
そのため、現在行っている事業に直接関係するセミナー・研修であれば、 必要経費として処理できる可能性があります。
たとえば、
- Web制作者が現在の制作業務に必要な技術研修を受講する
- カメラマンが現在の撮影業務に関する専門研修を受講する
- 美容関係の事業者が現在提供している施術の技術研修を受講する
- 事業で使用している会計・デザインソフトの操作講習を受講する
などは、現在の業務との直接的な関係を説明しやすい例です。
「経営者だから役立つ」だけでは判断しない
一方で、
- 経営者なら英語ができた方がよさそう
- いつかSNS集客をするかもしれない
- 将来的に別の仕事を始めたい
- 一般教養として学びたい
といった理由だけでは、 現在の事業との直接的な関係が弱くなる場合があります。
「仕事に役立つ」と「業務の遂行に直接必要」は同じではない
ビジネスに何らかの形で役立つ支出は数多くありますが、 それだけですべて事業の必要経費になるわけではありません。 現在の事業内容・受講内容・目的を具体的に確認しましょう。
資格取得費は経費になる?
資格取得費については、 セミナー代以上に慎重な判断が必要です。
特に重要なのが、
- 現在の仕事を行うために必要な知識・技能を深めるものなのか
- 新しい職業や資格上の地位を取得するための教育なのか
という違いです。
「事業に関係する資格だから」という理由だけで、 資格学校の授業料・受験料などを一律に必要経費と判断するのは避けましょう。
現在の業務に直接必要な研修・更新等
すでに行っている事業について、 その業務を続けるために直接必要な研修・講習・更新などであれば、 必要経費として説明しやすくなります。
ただし、 資格更新という名称だけで自動的に経費になるわけではなく、 現在の業務との関係や支出内容を確認します。
新しい職業に就くための資格取得は注意
現在とは異なる仕事を始めるため、 新しい資格を取得するケースでは特に慎重な判断が必要です。
過去の裁判例では、 接骨院を経営する事業者が柔道整復師資格を取得するために専門学校へ支払った費用について、 新しい地位・職業を獲得するための教育費であるとして、 必要経費への算入が認められなかった事例があります。
したがって、
- 資格を取得して別の職業を始める
- 資格取得によって新たな業務独占資格を得る
- 長期間専門学校・大学等へ通う
といったケースでは、 「将来の事業に役立つ」という理由だけで必要経費と断定しないようにしましょう。
現役税務会計スタッフのワンポイント
資格取得費は、 資格名だけを見て○×を決めるのではなく、 現在の事業内容と資格取得の目的をセットで確認するのがポイントです。 高額な資格学校代などで判断に迷う場合は、支払う前に税務署や税理士へ確認する方法もあります。
資格試験の受験料は経費になる?
資格試験の受験料についても、 「受験料だから経費」「資格学校代より少額だから経費」 という判断ではありません。
まず、 その資格取得自体が現在の業務とどのように関係しているのか を確認します。
現在の業務に直接必要な技能・知識の習得と密接に関連する試験なのか、 それとも新しい職業上の資格を得るためのものなのかによって、 必要経費性の判断も変わります。
Udemyなどのオンライン講座・動画講座は経費になる?
オンライン講座や動画講座についても、 オンラインか対面かという受講形式だけで税務上の結論が変わるわけではありません。
たとえば、 現在行っている事業に直接必要な技術を学ぶために オンライン講座を受講する場合は、 その業務との関係から必要経費を検討できます。
一方で、 趣味や一般的な自己啓発、 将来行うかもしれない別事業の勉強であれば、 事業との直接性が弱くなります。
セミナーの教材・専門書は経費になる?
セミナー・研修に直接必要な教材やテキストについても、 その研修が現在の事業に直接必要なものであれば、 必要経費として処理できる可能性があります。
また、事業に必要な専門書・参考書を単独で購入した場合には、 「新聞図書費」などで処理するケースもあります。
セミナー会場までの交通費・宿泊費は経費になる?
現在の事業に直接必要なセミナーや研修に参加するために、 電車・新幹線・飛行機・ホテルなどを利用するケースもあります。
研修自体が業務上必要なものであれば、 受講するために必要な交通費・宿泊費についても、 事業との関連性から必要経費を検討します。
ただし、
- セミナー後にそのまま観光する
- 家族を同行させる
- 研修とは無関係な私的旅行を含める
といった場合には、 事業部分とプライベート部分を分けて考える必要があります。
資格取得費・セミナー代の勘定科目は?
必要経費として処理できるセミナー・研修等については、 支出内容に応じて次のような勘定科目が考えられます。
| 支出 | 勘定科目例 |
|---|---|
| セミナー・研修受講料 | 研修費など |
| 専門書・参考書 | 新聞図書費など |
| 研修会場までの交通費 | 旅費交通費 |
| 研修のための宿泊費 | 旅費交通費等 |
勘定科目の名称だけで経費になるかどうかが決まるわけではありません。
まず必要経費に該当するかを判断し、 その後で支出内容に合った勘定科目を選びましょう。
資格取得費・セミナー代の仕訳例
業務に必要なセミナー33,000円をカードで支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 研修費 | 33,000円 | 未払金等 | 33,000円 |
業務用の専門書5,000円を現金で購入した場合
| 新聞図書費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
セミナー会場までの交通費8,000円を現金で支払った場合
| 旅費交通費 | 8,000円 | 現金 | 8,000円 |
資格・セミナーの経費管理を効率化するなら会計ソフトも選択肢
研修関連の支出は、 受講料だけでなく、
- 教材費
- 専門書
- 交通費
- 宿泊費
- オンラインサービス利用料
など複数の勘定科目に分かれることがあります。
取引が増えてきた場合は、 クラウド会計ソフトを使って日々の仕訳や領収書をまとめて管理する方法もあります。
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領収書だけでなく「何のための受講か」も残しておこう
セミナー代・研修費については、 領収書やカード明細を保存するだけでなく、 その研修と現在の事業との関係が分かる資料も残しておくのがおすすめです。
たとえば、
- 領収書・請求書
- セミナー申込メール
- 講座の案内ページ
- カリキュラム
- 使用した教材
- 受講目的
- 現在の業務との関係
などです。
会計ソフトの摘要も、
「セミナー代 33,000円」
だけではなく、
「現在のWeb制作業務に使用するSEO分析研修」
など、後から見ても内容が分かるように記録しておくと説明しやすくなります。
現役税務会計スタッフのワンポイント
特にオンライン講座は、カード明細だけを見ると 「何を購入した費用なのか」が分からなくなることがあります。 申込メールや講座ページ、受講内容が分かる資料を保存しておくと、 決算時にも処理を確認しやすくなります。
よくある質問
Q. 資格試験の受験料は経費になりますか?
資格試験の受験料だけで一律に判断するのではなく、 資格取得そのものが現在の事業にどのように関係しているのか を確認します。
新しい職業上の資格を得るための教育・資格取得であれば、 必要経費として認められない可能性もあるため注意しましょう。
Q. 資格学校・専門学校の授業料は経費になりますか?
「仕事に関係する学校だから」という理由だけで、 授業料全額が必要経費になるとは限りません。
新たな職業・資格上の地位を取得するための教育費については、 過去に必要経費性が否定された裁判例もあります。
高額な学校費用を経費処理する場合は、 現在の事業との関係を慎重に確認しましょう。
Q. Udemyなどのオンライン講座は経費になりますか?
オンラインか対面かではなく、 現在の事業の遂行に直接必要な内容かで判断します。
現在の業務に直接必要な技能・知識を習得するための講座であれば、 必要経費として検討できます。
Q. セミナーへ行くための電車代・新幹線代は経費になりますか?
セミナーそのものが現在の事業に直接必要であり、 その研修へ参加するために通常必要な交通費であれば、 事業との関連性から必要経費を検討します。
Q. セミナー後の懇親会費は経費になりますか?
セミナー受講料とは別に判断します。
懇親会に参加した相手・目的・事業との関係などから、 接待交際費等として必要経費になるかを検討します。
単なる私的な飲み会であれば必要経費にはできません。
Q. 教材は「研修費」と「新聞図書費」のどちらですか?
セミナー受講料と一体となった教材費であれば研修費として処理するケースがあります。
一方、単独で購入した専門書などは新聞図書費を使うこともあります。
勘定科目名だけで税務上の可否が決まるわけではないため、 内容が分かるよう継続して処理しましょう。
Q. 資格の更新料・更新研修は経費になりますか?
現在行っている業務と直接関係し、 その業務を続けるために必要な更新・研修であれば、 必要経費として説明しやすくなります。
ただし資格名だけで一律に判断せず、 実際の業務との関係を確認してください。
Q. 将来始める新事業の資格取得費は経費になりますか?
現在の事業ではなく、 将来新たに始める職業・事業のための資格である場合は、 現在の事業との直接的な関連性が弱くなります。
「将来使う予定」という理由だけで現在の事業の必要経費にするのは慎重に判断しましょう。
まとめ|「仕事に役立つ」ではなく「現在の業務に直接必要か」で判断
個人事業主の資格取得費・セミナー代は、 すべて必要経費になるわけではありません。
現在の事業を行うために直接必要な技能・知識を習得する研修で、 通常必要な費用であれば必要経費として検討できます。
一方、 新しい職業や資格上の地位を得るための教育費や、 趣味・自己啓発との性質が強い支出は慎重な判断が必要です。
この記事のまとめ
・現在の業務に直接必要な研修費は必要経費になり得る
・「仕事に役立つ」だけで経費になるわけではない
・新しい職業を得るための資格取得費は慎重に判断する
・オンライン講座も内容と事業との関係で判断する
・教材・専門書・交通費なども事業との関連性を確認する
・勘定科目は研修費・新聞図書費・旅費交通費などを使い分ける
・領収書だけでなく受講目的やカリキュラムも残しておく
現役税務会計スタッフのワンポイント
研修費・資格取得費で迷ったときは、 「この支出がなぜ現在の事業に直接必要なのか」を第三者へ説明できるか という視点で考えてみましょう。 支出時点で理由と証拠を残しておけば、後日の帳簿確認もしやすくなります。
資格・セミナー代で判断に迷っているものはありますか?
「この資格は経費になる?」「オンライン講座は研修費でいい?」など、 記事を読んでも分からなかった点があればコメントで教えてください。 今後の記事やFAQ作成の参考にさせていただきます。
参考:公的情報
資格取得費・研修費の必要経費については、 国税庁の最新情報や所得税基本通達もあわせて確認してください。

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