個人事業主の冠婚葬祭費は経費になる?香典・ご祝儀・供花・電報と領収書がない場合の処理を解説

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個人事業主として仕事をしていると、取引先の結婚式や葬儀、開業祝いなどで、 ご祝儀・香典・供花・電報といった冠婚葬祭の支出が発生することがあります。

そこで気になるのが、 「取引先への香典やご祝儀は経費にできるのか?」 という点です。

さらに、香典やご祝儀は現金を直接渡すことが多く、 一般的な買い物のように領収書が発行されないケースも少なくありません。

結論からいうと、冠婚葬祭費は 「香典だから経費」「ご祝儀だから経費」と決まるのではなく、 誰に・何の目的で支払ったのかによって判断します。

この記事では、個人事業主の香典・ご祝儀・供花・弔電・祝電などについて、 必要経費になる考え方から、領収書がない場合の記録方法、勘定科目・仕訳・消費税まで実務目線で解説します。

まず結論

取引先・得意先・仕入先など事業上の関係がある相手への香典・ご祝儀などは、 事業を営むうえで通常必要と認められる範囲であれば、必要経費として検討できます。

一方、親族やプライベートの友人など、 事業との関係がない相手への冠婚葬祭費は原則として個人的な支出です。

また、香典やご祝儀のように領収書が発行されない支出では、 支払日・相手・金額・支払理由を帳簿等へ記録し、 招待状や会葬礼状など支出を裏付ける資料も残しておくことが重要です。

目次

個人事業主の冠婚葬祭費は経費になる?

国税庁は、個人事業主の接待交際費について、 相手方や支出理由などからみて、事業を営むうえで通常必要と認められる金額が必要経費になる という考え方を示しています。

つまり、冠婚葬祭費についても、 単に「香典」「ご祝儀」という支出名だけで判断するのではありません。

主に次の3点を確認します。

  • 誰に支払ったのか
  • 事業とどのような関係があるのか
  • 金額が事業上通常必要と考えられる範囲か
支出例 基本的な考え方
主要取引先への香典 事業上の関係・必要性・金額から経費を検討
得意先担当者への結婚祝い 事業上の関係維持等との関連性から判断
取引先への供花・弔電 事業上必要であれば経費を検討
取引先への開業・移転祝い 事業との関係や金額から判断
親族への香典・ご祝儀 原則としてプライベート支出
学生時代の友人へのご祝儀 事業との関係がなければ原則プライベート

現役税務会計スタッフのワンポイント

冠婚葬祭費では、「何を買ったか」以上に「誰に・なぜ支払ったのか」が重要です。 同じ30,000円の香典でも、主要取引先への支出と親族への支出では税務上の考え方が変わります。 帳簿には相手先と事業上の関係まで分かるように記録しておくと、後から確認しやすくなります。

取引先への香典は経費になる?

取引先・得意先・仕入先など、 事業上の関係がある相手の葬儀で支払った香典については、 事業上の関係や支出理由、金額などから必要経費になるかを判断します。

たとえば、

  • 継続して取引している会社の代表者
  • 主要な得意先の担当者
  • 長期間取引している仕入先
  • 事業上密接な関係がある関係者

などへの香典で、事業上の関係維持という意味でも通常必要と考えられる範囲であれば、 必要経費として検討できます。

取引先ならいくらでも経費になるわけではない

相手が取引先であっても、 金額が無制限に必要経費になるわけではありません。

国税庁も、相手方や支出理由などからみて、 「事業を営む上で通常必要と認められる金額」という考え方を示しています。

相手との関係、地域・業界の慣行、支出目的などを踏まえて、 社会通念上不自然に高額な支出になっていないかも確認しましょう。

親族・友人への香典は経費になる?

親族・学生時代の友人・プライベートの知人など、 事業との関係がない相手への香典は、原則として個人的な支出になります。

「個人事業主として活動しているから、支払った香典はすべて交際費」 という考え方ではありません。

また、仕事上の知り合いである一方、 実質的にはプライベートの友人として支払ったケースなどは、 その支出が本当に事業上必要だったのかを慎重に判断する必要があります。

結婚式のご祝儀は経費になる?

ご祝儀についても香典と基本的な考え方は同じです。

取引先や得意先など、 事業上の関係がある相手へのご祝儀で、事業を営むうえで通常必要と考えられるものであれば、 必要経費として検討できます。

一方で、

  • 親族の結婚式
  • 学生時代の友人の結婚式
  • 事業と関係のない知人への結婚祝い

などは、原則として個人的な支出です。

開業祝い・移転祝い・出産祝いは経費になる?

冠婚葬祭費は、結婚式や葬儀だけではありません。

事業を続けていると、

  • 取引先の開業祝い
  • 店舗・事務所の移転祝い
  • 会社設立祝い
  • 周年祝い
  • 出産祝い
  • 見舞金

などを支払う場合もあります。

これらについても、 名称ではなく、相手との事業上の関係・支払目的・金額から判断します。

供花・弔電・祝電の費用は経費になる?

取引先の葬儀で供花や弔電を送ったり、 取引先の結婚式や開業時に祝電を送ったりするケースもあります。

事業上の関係がある相手に対して、 関係維持等のため通常必要と考えられる支出であれば、 必要経費として検討できます。

香典やご祝儀との大きな違いは、 供花や電報は花店・葬儀会社・電報サービスなどへ代金を支払うことが多い点です。

そのため、領収書・クレジットカード利用明細・注文メール・利用履歴などを 取得できるケースが比較的多くなります。

香典・ご祝儀は領収書がない!どう処理する?

香典やご祝儀は、現金を香典袋・祝儀袋に入れて渡すため、 一般的な商品購入のように領収書が発行されないケースが多くあります。

だからといって、 「領収書がない」という理由だけで、支出の事業性まで一律に決まるわけではありません。

重要なのは、 実際にその支出をしたことと、事業との関係を後から説明できるように記録を残すことです。

「出金伝票を書けば必ず経費になる」わけではない

出金伝票は、領収書が発行されない支出の内容を記録するために利用できる資料の一つです。 ただし、出金伝票を自分で作っただけで、その支出の事業性が証明されるわけではありません。 招待状・会葬礼状・案内メールなど、外部から受け取った資料もあわせて残しておくと説明しやすくなります。

出金伝票・帳簿に何を書けばいい?

領収書がない冠婚葬祭費では、少なくとも次の内容を記録しておきましょう。

① 支払日

② 相手先・支払先

③ 金額

④ 支出内容

⑤ 事業との関係・支払理由

たとえば、取引先代表者の葬儀で香典30,000円を支払った場合は、 次のように記録しておくと分かりやすいでしょう。

記録例

日付:2026年9月30日

相手先:○○株式会社 代表取締役○○氏

金額:30,000円

内容:香典

摘要:主要取引先・○○氏葬儀参列のため

領収書の代わりに残しておきたい資料

出金伝票や帳簿への記録だけでなく、 客観的に支出内容を確認できる資料があれば一緒に保存しておきましょう。

  • 葬儀の案内状
  • 会葬礼状
  • 結婚式の招待状
  • 開業・移転等の案内状
  • メール・メッセージで届いた案内
  • 供花・電報の注文確認メール
  • クレジットカード利用明細
  • 相手との事業上の関係が分かる記録

紙で受け取った資料だけでなく、 メールやオンライン上の注文履歴なども、 支出の内容を確認する材料になります。

現役税務会計スタッフのワンポイント

香典やご祝儀は、数か月後・数年後に帳簿だけを見ても 「誰に何のために支払ったのか」を思い出せなくなることがあります。 支払ったその日のうちに会計ソフトの摘要に入力するのがおすすめです。 「香典 30,000円」だけではなく、「主要取引先○○社・代表者葬儀」まで残しておくと確認しやすくなります。

冠婚葬祭費の勘定科目は?

取引先など事業関係者への香典・ご祝儀などで、 必要経費として処理する場合は、 「接待交際費」として処理するのが一般的です。

重要なのは、 「接待交際費と入力したから経費になる」のではないという点です。

先に、

  • 事業との関係があるか
  • 事業上必要な支出か
  • 金額が通常必要と考えられる範囲か

を確認し、そのうえで適切な勘定科目へ仕訳します。

会計ソフト上で「慶弔費」などの補助科目を設けて管理する方法もありますが、 税務上は勘定科目の名前だけで判断されるのではなく、 支出の実態と事業との関係が重要です。

香典・ご祝儀・供花の仕訳例

取引先へ香典30,000円を現金で渡した場合

借方 金額 貸方 金額
接待交際費 30,000円 現金 30,000円

取引先の結婚式でご祝儀50,000円を現金で渡した場合

借方 金額 貸方 金額
接待交際費 50,000円 現金 50,000円

取引先への供花22,000円を事業用カードで支払った場合

借方 金額 貸方 金額
接待交際費 22,000円 未払金等 22,000円

クレジットカード利用時の貸方科目は、 実際の記帳方法やカードの処理方法によって異なる場合があります。

香典・ご祝儀の消費税はどうなる?

ここは、所得税の必要経費と混同しやすいポイントです。

「所得税上、必要経費になるか」と「消費税の課税仕入れになるか」は別に考えます。

国税庁は、取引先などへ支払う 祝金・餞別・弔慰金などの金銭による支出は、消費税の課税仕入れにはならない としています。

つまり、事業上必要な取引先への香典が所得税上の必要経費になる場合でも、 その現金による香典自体について消費税の仕入税額控除を行うものではありません。

支出 所得税上 消費税上の考え方
取引先への香典 事業上必要なら経費を検討 金銭による弔慰金等は課税仕入れにならない
取引先へのご祝儀 事業上必要なら経費を検討 金銭による祝金は課税仕入れにならない
花店から購入した供花 事業上必要なら経費を検討 物品の購入として別途判定
電報サービス料金 事業上必要なら経費を検討 サービス購入として別途判定

所得税の「経費」と消費税の「課税仕入れ」は別

「経費になるから消費税も控除できる」とは限りません。 特に香典・ご祝儀などの金銭による祝金・弔慰金は課税仕入れにならないため、 会計ソフトへ入力するときも消費税区分に注意しましょう。

親族・友人への冠婚葬祭費を事業用口座から払ったら?

経費にならないプライベートの香典・ご祝儀を、 間違えて事業用口座や事業用カードから支払ってしまうこともあります。

その場合、 事業用口座から支払ったからといって必要経費になるわけではありません。

個人事業主が、親族へのご祝儀30,000円を事業用口座から支払った場合は、 たとえば次のように処理します。

借方 金額 貸方 金額
事業主貸 30,000円 普通預金 30,000円

結婚式・葬儀に出席するための交通費・宿泊費は経費になる?

冠婚葬祭では、ご祝儀や香典だけでなく、 新幹線代・飛行機代・ホテル代などが発生するケースもあります。

これらについても、 その結婚式・葬儀への出席自体が事業上必要だったのかを基準に判断します。

取引先との事業上の関係から出席する必要性が認められる場合は、 交通費・宿泊費についても事業との関連性を踏まえて必要経費になるか検討します。

一方、親族やプライベートの友人の結婚式・葬儀であれば、 交通費や宿泊費も原則として私的な支出になります。

冠婚葬祭費は税務調査でも説明できる記録を残そう

香典やご祝儀は通常の経費と比べて、 領収書が発行されないケースが多い支出です。

そのため、 後から帳簿を確認したときに、 「誰への支出なのか」「なぜ事業に必要だったのか」が分かるようにしておくことが重要です。

最低限、

  • 支払年月日
  • 相手方
  • 支払金額
  • 香典・ご祝儀等の支出内容
  • 相手との事業上の関係
  • 支払理由

を記録しておきましょう。

さらに、招待状・会葬礼状・案内メールなど、 第三者から受け取った資料も一緒に残しておくと、 支出内容を説明しやすくなります。

現役税務会計スタッフのワンポイント

香典・ご祝儀では、金額だけを入力して終わりにせず、 会計ソフトの摘要欄を積極的に使うのがおすすめです。 「交際費30,000円」ではなく、 「○○株式会社・代表者葬儀・香典30,000円」のように残しておけば、 決算時や後日の確認が圧倒的にしやすくなります。

よくある質問

Q. 香典は領収書がなくても経費にできますか?

領収書が発行されないことだけで、 一律に必要経費にならないと決まるわけではありません。

重要なのは、 実際の支出内容と事業との関係を帳簿や資料によって説明できるようにすることです。

支払日・相手方・金額・支出理由等を記録し、 会葬礼状や葬儀案内などがあれば一緒に保存しておきましょう。

Q. 出金伝票さえ作れば香典を経費にできますか?

いいえ。

出金伝票を作成したこと自体で、必要経費になるわけではありません。

まず、その香典が事業上必要な支出なのかを判断します。 そのうえで、領収書がない場合の支出記録として出金伝票などを利用します。

Q. 友人でも仕事を紹介してくれる人なら経費になりますか?

「友人」という名称だけで判断するのではなく、 実際にどのような事業上の関係があるのかを確認します。

単に将来仕事を紹介してくれるかもしれないという程度ではなく、 継続的な取引関係や具体的な事業上の関係があるのかなど、 実態に基づいて判断しましょう。

Q. 香典袋・祝儀袋の購入代も経費になりますか?

事業上必要な香典・ご祝儀のために購入した香典袋・祝儀袋であれば、 その支出についても事業との関係から必要経費になるかを検討できます。

なお、現金で渡す香典・ご祝儀そのものと、 店舗で購入する香典袋・祝儀袋では消費税上の扱いも同じとは限らないため、 分けて記録しておくと分かりやすいでしょう。

Q. 香典を会計ソフトへ入力するときの消費税区分は?

得意先等へ現金で支払う弔慰金などは、 消費税の課税仕入れにはなりません。

会計ソフトによって消費税区分の名称は異なるため、 利用しているソフトの区分内容を確認して入力しましょう。

Q. 結婚式への交通費やホテル代も経費になりますか?

結婚式への出席そのものに事業上の必要性がある場合は、 交通費や宿泊費についても事業との関連性から必要経費になるかを検討します。

一方、親族やプライベートの友人の結婚式であれば、 原則として個人的な支出になります。

まとめ|冠婚葬祭費は「誰に・何のために支払ったか」を記録しよう

個人事業主が支払う香典・ご祝儀・供花・電報などの冠婚葬祭費は、 その名称だけで必要経費になるかが決まるわけではありません。

取引先など事業上の関係がある相手への支出で、 事業を営むうえで通常必要と考えられるものであれば、 必要経費として検討できます。

一方、親族やプライベートの友人などへの支出は、 原則として個人的な支出です。

この記事のまとめ

・冠婚葬祭費は「誰に・なぜ支払ったか」で判断する

・取引先への香典やご祝儀は事業上必要な範囲で経費を検討できる

・親族や私的な友人への支出は原則プライベート

・領収書がない場合は支払日・相手・金額・理由を記録する

・出金伝票を作れば自動的に経費になるわけではない

・招待状や会葬礼状など客観資料も残しておく

・勘定科目は接待交際費が基本

・金銭による祝金・弔慰金は消費税の課税仕入れにはならない

現役税務会計スタッフのワンポイント

冠婚葬祭費は領収書が出ないことも多いため、 「証拠がないから諦める」のではなく、支払時点で記録を残す習慣が重要です。 逆に、記録を作っただけで経費になるわけでもありません。 「事業との関係」と「支出した事実」の両方を説明できる状態にしておきましょう。

参考:公的情報

必要経費・帳簿の記載・消費税の取扱いについては、 国税庁の最新情報もあわせて確認してください。

接待交際費|国税庁 確定申告書等作成コーナー

白色申告者の記帳・帳簿等保存制度|国税庁

寄附金や交際費の取扱い|国税庁

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この記事を書いた人

biz-zeimu編集長(現役70社担当)のアバター biz-zeimu編集長(現役70社担当) 税務・会計メディア運営

東京都内の会計事務所に勤務する現役の税務・会計スタッフ。法人および個人事業主をあわせて常時70社以上の税務・会計実務をダイレクトに担当。現場で日々生じるリアルな決算・申告・経理課題の解決に携わる。

また、大学院において専門的な税法論文を執筆したバックグラウンドを持ち、法令に基づく厳密な理論と、現場の実務感覚の両面から正確な税務知識の追及を徹底している。

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