「妻に経理や事務作業を手伝ってもらっているけど、給料を払って経費にできる?」
「青色事業専従者給与はいくらまでなら税務署に認められる?」
「専従者給与にすると、配偶者控除や扶養はどうなるの?」
個人事業主として家族と一緒に仕事をしている方にとって、ぜひ知っておきたい制度が「青色事業専従者給与」です。
原則として、個人事業主が生計を一にする配偶者や親族に支払った給与は、そのまま必要経費にできるわけではありません。
しかし、青色申告者が一定の条件を満たし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していれば、実際に家族へ支払った給与のうち適正な金額を必要経費にできる可能性があります。
うまく活用すれば大きな節税効果が期待できる一方で、「届出を出したから月30万円でも全部経費」「家族だから実際に振り込まなくてもいい」という制度ではありません。
本記事では、現役で個人事業主・法人の税務会計実務に携わるスタッフの視点から、青色事業専従者給与の条件、届出期限、給与額の決め方、扶養との関係、仕訳、税務調査で注意したいポイントまで分かりやすく解説します。
【まず結論】青色事業専従者給与の重要ポイント
- 家族への給与は原則としてそのまま経費にはできない
- 青色申告者が一定の条件を満たせば、適正額を必要経費にできる
- 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要
- 原則として、その年の3月15日までに提出する
- 1月16日以後の開業や新たに専従者になった場合は、原則その日から2か月以内
- 「月○万円まで」という一律の上限額があるわけではない
- 仕事内容・勤務時間・事業規模などから見て適正な給与額であることが重要
- 青色事業専従者として給与を受け取ると、原則として配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除の対象にはできない
青色事業専従者給与とは?家族への給料を経費にできる制度
個人事業主の場合、生計を一にしている配偶者や親族に仕事を手伝ってもらい、その対価としてお金を支払ったとしても、通常の従業員とまったく同じように自由に給与を必要経費にできるわけではありません。
そこで青色申告者に設けられている特例が「青色事業専従者給与」です。
一定の要件を満たした家族が実際に事業へ従事し、必要な届出を行ったうえで適正な給与を支払っていれば、その給与を必要経費として計上できます。
【イメージ】妻に経理をお願いしている場合
個人事業主である夫
↓
妻が毎月、請求書作成・記帳・入金確認・領収書整理などを担当
↓
青色事業専従者の要件を満たして必要な届出を提出
↓
仕事内容等に見合った給与を実際に支給
↓
適正な給与額を事業の必要経費として計上
所得の高い個人事業主ほど、適正に活用できれば節税効果が大きくなる可能性があります。
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節税まとめ 【2026年版】個人事業主が絶対やるべき節税対策7選!小規模企業共済・iDeCo・ふるさと納税の組み合わせ術青色事業専従者給与を経費にするための条件
「家族が仕事を手伝っている」というだけでは青色事業専従者給与にはできません。
主に確認しておきたいポイントは以下です。
【青色事業専従者の主な要件】
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- 原則として、その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事していること
- 青色事業専従者給与に関する届出書を期限内に提出していること
- 届出書に記載した方法・金額の範囲内で実際に給与を支払っていること
- 支給額が仕事内容などから見て労務の対価として相当であること
特に間違いやすいのが、「専らその事業に従事している」という条件です。
「専ら従事」とは?パート・会社員との掛け持ちは要注意
青色事業専従者は、その名称どおり、基本的には事業主の事業に専従していることが求められます。
そのため、配偶者が別の会社でフルタイム勤務をしながら、夜に少しだけ帳簿を入力しているようなケースでは、単純に青色事業専従者として扱えるとは限りません。
一方で、学生である期間など、事業に専ら従事することができない期間があるケースには別の判定があります。
💡 現役税務スタッフのワンポイントアドバイス:形式より「実態」が重要です
「届出書を提出したから専従者」というわけではありません。実際にどんな仕事をしているのか、週何日・何時間程度働いているのかなど、勤務実態を説明できることが重要です。家族への給与は第三者への給与よりも実態が見えにくいため、仕事内容や勤務記録を残しておくことをおすすめします。
青色事業専従者給与はいくらまで?上限額は決まっていない
検索で非常に多いのが、「青色事業専従者給与はいくらまでなら大丈夫?」という疑問です。
結論として、青色事業専従者給与には「月10万円まで」「年間103万円まで」といった一律の給与上限が設定されているわけではありません。
ただし、好きな金額を経費にできるわけでもありません。
給与額が適正かどうかは、主に次のような事情から判断します。
- 専従者が実際に働いた期間
- 担当している仕事内容
- 仕事の難易度や責任など労務の性質・程度
- 他の従業員へ支払っている給与
- 同種・同規模の事業で同じ仕事をする人の給与水準
- 事業の規模や利益の状況
妻に月5万円・10万円・20万円なら経費になる?
たとえば、妻が毎月経理を担当しているケースを考えてみましょう。
| 給与例 | 年間給与 | 考え方 |
|---|---|---|
| 月5万円 | 60万円 | 仕事内容・勤務時間等と照らして判断 |
| 月10万円 | 120万円 | 同様に労務の対価として適正か確認 |
| 月20万円 | 240万円 | 高額になるほど仕事内容・責任・事業規模等との整合性がより重要 |
重要なのは「月10万円なら安全」というような金額基準で判断しないことです。
同じ月10万円でも、週5日しっかり経理・請求・顧客対応をしているケースと、月に数時間だけ領収書整理をしているケースでは、給与額の合理性はまったく違います。
💡 現役税務スタッフのワンポイントアドバイス:給与額の「決め方」を残しておこう
実務上おすすめなのは、給与額だけを決めるのではなく「担当業務」「月の勤務日数・時間」「時給換算した場合の水準」などを簡単にメモしておくことです。たとえば「経理・請求業務を月80時間、近隣の経理パートの給与水準も参考に月10万円」など、第三者に説明できる考え方を残しておくと給与額の根拠が明確になります。
青色事業専従者給与の届出期限はいつ?
青色事業専従者給与を必要経費にするには、原則として「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に所轄税務署へ提出します。
【届出期限】
通常:その年の3月15日まで
その年の1月16日以後に新規開業した場合:開業日から2か月以内
その年の途中から新たに専従者が加わった場合:専従者が加わった日から2か月以内
「確定申告のときにまとめて専従者給与を経費にすればいい」と考えていると、届出期限を過ぎてしまう可能性があるため注意しましょう。
届出書には何を書く?
届出書には、主に次のような内容を記載します。
- 専従者の氏名
- 続柄
- 年齢
- 仕事内容
- 給与の金額
- 賞与を支給する場合の基準・金額
- 昇給の基準など
実際に経費として認められる給与は、基本的に届出書に記載した金額・支給方法の範囲内で、かつ労務の対価として相当なものです。
途中で専従者給与を増額しても大丈夫?
事業が成長して仕事量が増えれば、「妻の給与を月8万円から15万円へ増やしたい」といったケースもあるでしょう。
昇給基準が届出書に記載されており、その基準に従った通常の昇給であれば問題にならないケースがあります。
一方、届出内容から大きく外れる変更などを行う場合には、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」の提出が必要になる場合があります。
また、変更届を出せば高額給与が自動的に認められるわけではなく、変更後も仕事内容・勤務状況・事業規模などに照らして適正な金額である必要があります。
青色事業専従者給与の仕訳方法
実際に専従者へ給与を支払った場合は、原則として「専従者給与」などの勘定科目で記帳します。
例:妻へ専従者給与10万円を銀行振込した場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 専従者給与 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
なお、実際の給与支給では源泉所得税が発生するケースもあるため、その場合は預り金を含めて仕訳します。
青色事業専従者も給与所得者です。給与の支払者となった個人事業主側には、源泉徴収や年末調整など給与支払者として必要な手続きが発生する場合があります。
最大の注意点!専従者給与と配偶者控除・扶養の関係
青色事業専従者給与を検討するときに、給与額と同じくらい重要なのが配偶者控除や扶養との関係です。
青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は、原則として同一生計配偶者や扶養親族として扱うことができません。
⚠️ 「給与を少額にすれば配偶者控除も使える」とは限りません
「年間給与を一定額以下にすれば、専従者給与を経費にしながら配偶者控除も使えるのでは?」と考えやすいところですが、青色事業専従者として給与の支払いを受けていること自体が重要です。単純に給与収入の金額だけで配偶者控除の可否を判断しないよう注意しましょう。
したがって、青色事業専従者給与を導入するときは、
- 事業主側で増える必要経費
- 失う可能性のある配偶者控除等
- 専従者本人に発生する所得税・住民税
- 社会保険上の扶養への影響
などを総合的に確認する必要があります。
「専従者給与を払えば必ず得」という制度ではない点は覚えておきましょう。
白色申告の「事業専従者控除」と何が違う?
白色申告にも、家族が事業に専従している場合に利用できる「事業専従者控除」があります。
| 比較 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 制度 | 青色事業専従者給与 | 事業専従者控除 |
| 基本的な考え方 | 適正な給与額を必要経費に算入 | 一定の計算による控除額を必要経費とみなす |
| 配偶者の場合 | 適正額(届出額の範囲内) | 最高86万円※ |
| その他の親族 | 適正額(届出額の範囲内) | 1人につき最高50万円※ |
| 事前届出 | 必要 | 青色事業専従者給与のような事前届出は不要 |
※白色申告の事業専従者控除は、事業所得等の金額による別の上限計算もあるため、必ずしも86万円・50万円を全額控除できるとは限りません。
税務調査で注意!専従者給与が否認されやすい3つのケース
ケース1:実際にはほとんど仕事をしていない
届出上は「経理担当」となっていても、実際には月に数回領収書を整理する程度なのに高額な給与を支払っている場合、給与額の妥当性が問題になる可能性があります。
ケース2:給与を払ったことにして実際には支払っていない
帳簿上だけ毎月10万円を「専従者給与」と計上し、実際には妻へ支払っていない、といった処理は避けましょう。
専従者給与は実際に支払った給与が基本です。
ケース3:仕事内容に対して給与が明らかに高すぎる
事業利益が年間300万円なのに、簡単な事務作業だけを担当する家族へ年間300万円の給与を支払っているなど、事業規模や仕事内容とのバランスが不自然なケースでは説明を求められる可能性があります。
💡 現役税務スタッフのワンポイントアドバイス:家族だからこそ「第三者に説明できる資料」を
専従者給与では「本当に働いているか」「なぜこの給与額なのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。給与台帳や銀行振込履歴だけでなく、勤務日・勤務時間、担当業務、作成した請求書や資料などを残しておくと勤務実態を説明しやすくなります。家族間だからこそ、第三者の従業員へ給与を払うつもりで記録を整えておくのがおすすめです。
専従者給与を使うと本当に節税になる?
専従者給与の大きなメリットは、適正な給与を必要経費として計上することで、事業主本人の事業所得を圧縮できる点です。
たとえば、専従者給与を支払う前の事業所得が500万円で、妻へ年間120万円の適正な専従者給与を支払ったとします。
【単純化したイメージ】
専従者給与計上前の所得:500万円
− 専従者給与:120万円
= 事業主側の所得:380万円
ただし、これはあくまで仕組みを理解するための単純化した例です。
妻側には120万円の給与収入が生じますし、事業主側では配偶者控除等を受けられなくなるため、世帯全体でどれだけ税負担が変わるかを確認する必要があります。
「120万円を経費にしたから120万円得する」という意味ではありません。
🔥 個人事業主が一緒に確認したい節税制度
専従者給与の記帳・給与管理は会計ソフトで効率化できる
青色事業専従者給与を始めると、単に毎月給与を支払えば終わりではありません。
給与の支給記録や仕訳、源泉徴収、年末調整など、これまで一人で事業をしていたときにはなかった給与関係の事務が発生する可能性があります。
特に事業用口座・クレジットカード・給与の支払いをバラバラに管理すると、確定申告時の確認作業が増えてしまいます。
青色申告を続けながら日々の記帳を効率化したい場合は、クラウド会計ソフトを利用して銀行口座やクレジットカードの明細を自動取得しておくと管理しやすくなります。
会計ソフトごとに料金・無料期間・給与関連サービスとの連携範囲は異なるため、現在の事業規模や必要な機能を確認して選びましょう。
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📱 質問に答えながら確定申告を進めたい方に
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まとめ:青色事業専従者給与は「届出・勤務実態・適正額」の3つが重要
青色事業専従者給与は、家族と一緒に事業を行っている個人事業主にとって非常に重要な制度です。
最後にポイントを整理します。
- 家族への給与は原則そのまま必要経費にはならない
- 青色申告者なら一定の条件で青色事業専従者給与として経費にできる
- 原則3月15日までの事前届出が必要
- 給与額に一律の上限はないが、労務の対価として適正である必要がある
- 「届出額以内=全額OK」ではない
- 勤務時間・仕事内容・給与振込などの記録を残しておく
- 専従者給与を受ける人は、配偶者控除等や扶養控除との関係に注意する
- 給与だけでなく、源泉徴収や年末調整などの手続きも確認する
特に重要なのは、「節税になるから家族へ給料を払う」のではなく、「実際に家族が事業で働いており、その仕事に見合った給料を支払う」という順番で考えることです。
仕事内容・勤務実態・給与額の根拠をきちんと残し、正しい手続きを行ったうえで活用しましょう。
専従者給与だけでなく、小規模企業共済・iDeCo・ふるさと納税なども含めて、自分に合った節税方法を組み合わせていくことが大切です。

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